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A fulfilled life - Jean Michel Kaneko Photograhie

知足是福。音楽家・演奏会の写真がメインのカメラマン、公開OKの作品は掲載中。IT企業役員、趣味で料理の YouTuber、趣味は仕事と同様大切でロードバイクと料理とワインフリーク。

ある夏の風景

ひめごと雑文祭

■右挿入艶絵:シノハラアキラ画伯(★みかんの星★)


 ひめごと雑文祭は以下の縛りで平成15年2月3日より3月3日まで開催されていました。お読みなって頂いておわかりと思いますが、この「ある夏の風景」はどうひいき目にみても縛りの(5)(6)を満たすことが出来ませんでした。さらにこの拙作を読まれた「花も恥らう淑女たちも思わず濡れる」ことがあるのかはなはだ自信がありません。

●ひめごと縛り

  1. 参加者のみなさまに,なにより優先していただきたいこと。 それは 「エロ」 。花も恥らう淑女たちも思わず濡れる、そんな作品をお待ちしています。
  2. テキストのテーマは 「女の秘密」 。貴女がひた隠す“ひめごと”をご披露ください。
  3. 文中に一箇所以上 「はじめて」 という言葉をインサートして下さい。
  4. 書き出し,もしくは締めの一文は「今日●●を切った」 (●●の言葉は自由)でお願いいたします。文脈上必要であれば,語尾の変化や語句の挿入も可能です。「●●を切りました」「今日◯◯の●●を△△きった」など。
  5. 性行為・性器をあらわす固有名詞や露骨すぎる表現は禁止。例:ペニス,ヴァギナ,セックス,マスターベーションフェラチオ,クンニなど
  6. 男性参加者は,女性になったつもりでテキストをご執筆ください。れっつ,ネカマデビュー。


熱すぎる太陽のせいさ

Even in the distance You and I watch the same sky
 今日夏休みの残りは10日をきった。日本海に面した最北の小さな町。冬の長いこの町の夏休みは、まるで短い夏に合わせるように八月の20日には終わる。だが砂浜には海水浴を楽しむ住民の為の「インフォメーションセンター」が出来、監視塔も立つ。少ないながら海の家も出て、まるで束の間の夏を惜しむように家族連れが押し寄せる。町営の監視所のスピーカーがチューブやサザンの曲をがなり立てるさまは長い間雪に閉ざされるこの町の人々の鬱憤を晴らしている真夏の狂気だ。監視員の孝史が沖に浮き輪のまま流されていく子供を発見したのはそんな暑い日の午後だった。彼はするすると監視塔をおりると海に向かって走っていった。やがて孝史と子供が家族連れでにぎわう波打ち際に戻ってきて子供が「お帽子!お帽子!お帽子なくすとおっかぁに叱られるよ。」と泣き叫ぶのを気にとめている人はいなかった。ただ孝史だけがまだ沖の海上にプカプカ浮かぶミッキーマウスの帽子を目指して泳いでいった。

 その日、奈津子はいつものように烏賊のみりん干しと国道を挟んで海岸の向かい側にあるスーパーのバイトに出かけた。あち~いなー、だっり~なー、と心の中で呟きながらいつものようにレジに立ち、前任の主婦のパートさんと交代した。これから夕方に向かって客が津波の様に押し寄せてくる。それさえ終わればあっという間に時は過ぎる。今日は孝史とデートだ。客が押し寄せる前のひととき、この仕草もいつものように奈津子はレジ台の角にクリトリスを押しつけて孝史と過ごす時に想いを馳せる。アイツのシャコタンのセドリックで能代あたりまで足を伸ばしてみようか。この間は能代まではじめてBOOWYのライブを聴きにいった。

「逢いたかったゼ!」

 氷室狂介の第一声にしびれた。

「カッコがいいぜ!おまえはいつでも~♪♪こころも~カ~ラダもバラ売り~してサ♪♪。・・・」
 布袋友康のメロディックなギターに載せて氷室が腰をくねらす。やがて絶叫

「OK!ここは能代だぜ!ライブハウス、能代公民館にようこそッ!」

 孝史と二人でいや他のヤンキーな聴衆達もみんな全員一緒になってBOOWYのリズムに酔って踊った。思い出すと心なしか浮かれた。自然と躯をレジ台に押しつける動きがリズムをとっていた。なんとなくボーッとしたまま何人かの客の支払いをこなした時だった。明美と昌代がジャージ姿のまま入口から息咳こんで駆け込んできた。

なっちゃん!大変だよ!早く海岸へ来て!」
「孝史が!孝史が!」

 明美と昌代は隣にいた顔見知りのレジ係の女性に「大変なんさ!ちょっとお願いします。」と訛りもあらわに声をかけると奈津子の腕をとり海岸へ向かった。熱く乾ききった砂が足に絡み3人とも僅かな距離の町営の「インフォメーションセンター」までが異様に遠く感じられた。建物の前には既に救急車が到着し赤い光を放って周囲には人垣が出来ていた。3人は人垣を割って中に入った。

 そこには汗だくになって呆然とする3人の救急隊員と既に担架に乗せられ紫色をして異様に腹の膨れた孝史の姿があった。顔もむくれ白目を剥き口はひん曲がったまま開けっぱなしだ。膨張した下腹部を気遣って救急隊員がパンツを外したのだろう。その下半身には白いタオルがかけられていたが、激しい蘇生作業を物語るかのように横にずれ、やや捲れた隙間から縮あがって紫色に変色したペニスが顔をのぞかせていた。丁度、奈津子たち3人が到着したとき救急隊の隊長らしき男が「こりゃ、だみだ。」とぽつりと呟き孝史の顔に白い布をかけた。すかさず3人の救急隊員は孝史の乗った担架を取り囲み孝史の顔の方に躰を向けると合掌して頭を垂れた。その光景に奈津子は愕然とした。

「孝史・・・。」

 と呼びかけてみたが声にならなかった。傍らに寄り孝史の顔をさすってあげるのが精一杯だった。倒れそうだったのかも知れない。両脇で明美と昌代が奈津子を支えた。意識が遠のいていく。砂防植林の蝉も鳴き声と、ミス・ブランニューデイを唄う桑田佳祐の歌声が波の砕ける音にもみ消されながら遠ざかっていった。熱い午後だった。

 駆けつけた駐在さんは孝史に助けられた子供を捜した。しかし誰も目撃した人は現れない上、当の子供もわからなかった。まるで短い夏のざわめきが全てをかき消してしまったように。烏賊を干す台の手前でしゃがみながら網をつぐむ老人がぼそっとつぶやいた。

「だれも見ちゃぁいねぇ。この熱すぎる太陽のせいさ。夏の間この町はおかしくなっちまう。」

 やがて孝史の亡骸は救急車に積まれ病院に向かった。医師が正式に死亡確認をするのだという。奈津子達もタクシーで後を追った。波打ち際では何事もなかったように波は打ち寄せは退いていく。波の砕ける音。子供達の歓声。旋回するトンビのン鳴き声。いつのまにか浜辺は短い夏の真っ盛りの午後に戻っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 奈津子は高校を卒業すると孝史を吹っ切るように東京へ出た。時の流れは孝史を忘れさせてくれたかに見えた。しかし何人かの男と付きあいはしたものの結婚までは至らなかった。やがて親の薦めもあり郷に帰って見合いで結婚し二児をもうけた。大工の夫はそこそこ稼ぐし優しかった。なんの不満もあるはずのない生活だったが子育てに追われ幸せ一杯という生活でもなかった。

 孝史の墓は海岸を見下ろす丘の一角にあった。背には奥羽山脈が控えている。奈津子は命日が過ぎたころ墓参りをする。誰かと会って自分の近況を説明したりするのが面倒で億劫だからだ。家庭もある自分にとっても死んでしまった孝史とだけは二人きりでいたかった。丘に登る道の展望はすばらしく、ことしもまた束の間のあいだ真っ青に染まり、白い波の縞をたたえる海を眺め、吹き出す汗をぬぐいながら奈津子は歩を進めた。焦れるような夏の熱気が微かに眼下の海岸のざわめきを伝えてくる。がなり立てるスピーカーから吐き出される音が安室奈美恵やグローブに取って代わられたといえ夏の狂気は相変わらずだ。

 孝史の墓石の前に思わぬものがおいてあった。古ぼけたミッキーマウスの水泳帽だった。背後で人が動く気配した。そして焼け付くような視線を感じ取った。振り向いてあたりを見回しても誰もいない。この帽子を届けた主は突然の奈津子の出現に驚いて隠れているに違いない。今頃貴方が現れたところで何も変わらないのよと思った。別に貴方が孝史を殺した訳じゃないわ。奈津子の脳裏にあの日の孝史の姿がはっきりと浮かんできた。白目を剥いたむくれた顔、ひん曲がったまま開けっぱなしの口。紫色に変色したペニス。やがてその孝史の姿はミッキーマウスの水泳帽を目指して一心不乱に泳ぐ姿に変わる。BOOWYのリズムに踊り狂う孝史の顔。走馬燈の様に駆けめぐる熱い想い。感情がこみ上げるように襲い、音を立てるように奈津子の胸を締め付けた。孝史が恋しい。気が付くとふとクリトリスを墓石の角に押しつけていた。

 いつの間にか空には暗雲が立ちこめ遠く閃光を走らせていた空から大粒の夕立が降ってきた。奈津子は視線を感じながらも墓石に両手をつき、躯を墓石の角で刺激した。叩きつけるような夕立が全身を濡らし奈津子の思いを加速した。嗚咽ともいえる声にならない声が奈津子の口から漏れた。突き抜けるような迸る想い。全身を雨に打たれながらも躯は熱かった。雷の轟音と青白く輝く閃光がずぶ濡れになって喘ぎ、のぞける奈津子の姿を妖艶に浮き彫りにした。そして自分自身の姿を想い描き、奈津子は更に興奮し濡れた。少し離れた大きな墓石の陰に隠れていたミッキーマウスの水泳帽の主の青年もやがて奈津子の近くまで来て、雨に打たれながらペニスをむき出しにして激しくしごいていた。それぞれが快感に喘ぎながら二人ははっきりお互いの存在を認識し、しかも一定の物理的距離をおいて、競うようにそれぞれ快感をむさぼりあった。やがて奈津子が果て、後を追うように青年も自らを迸らせて果てた。二人は距離をそのままに雨の中に座り込んだ。放心状態だった。

 どれくらい時が過ぎただろうか。夕立は上がり夕日が墓地の丘を紅く染め出した。青年はふと我に返り恥ずかしそうに慌ててズボンをはいた。もとより奈津子は服をつけたままだ。おずおずとズボンをあげる青年を見ながら奈津子は微笑んだ。不思議と奈津子には恥ずかしさがなかった。

「あなたが見てたの知ってたのよ。ありがとうね。ミッキーマウスの帽子。」
「すみません。もっと早くお会いしてお礼が言いたかった。」

 青年は恥ずかしそうにしかし深々と頭を下げた。

「へー、そのお礼にちんちんしごいて見せたんだ?」
「いえ、そんなわけじゃ・・・」
「じゃあ、熱すぎる太陽のせいってわけ?・・・んじゃ、やりなおそっか。舐めてあげるよ。ほら、だしてごらん。」
「えっ、ホントですか」
「調子にのるんじゃないよ。あたしのいい人奪っておいてさ」

 と答えて、ケラケラ笑いながら奈津子は青年の頭をこずいた。二人は顔を見合わせて大笑いした。


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