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A fulfilled life - Jean Michel Kaneko Photograhie

知足是福。音楽家・演奏会の写真がメインのカメラマン、公開OKの作品は掲載中。IT企業役員、趣味で料理の YouTuber、趣味は仕事と同様大切でロードバイクと料理とワインフリーク。

そんなに不安を煽らなくても

視聴者に正確に伝えてほしい

 お昼に長崎チャンポンを食べていたらお店のテレビでコンクリートの強度の問題を取り上げていた。姉歯事件以来この手の報道は枚挙に遑が無いくらいだが表現があまりに大げさなことと、肝心のポイントを伝えないことがとても気になった。はじめにJR西日本の新幹線のコンクリート橋梁が取り上げられた。この問題は既報でJRも改修、もしくは補修に取り組んでいる。そうしたJRの取り組みはコーナーの最後に一言さらりとキャスターの口から述べられたが、それまではまったくオーバーな映像の繰り返しだった。コンクリートが剥離して鉄筋が出ている場所の映像があたかも自然にそうなったような解説付きで流されたが、映像を見る限りチョークでマーキングがされていたので調査中、もしくは補修中の部分の映像だろう。あるいは長い範囲に渡ってカッターを入れ一直線に不良部分を斫りとった部分(勿論JR西日本の指示による調査工事だと思われる箇所)を、キャスターは「こんなに長い範囲に渡って一直線にコンクリートが剥離しています!」と絶叫していたけれどオマエ、ホントにバカか?

 二番目のコーナーでは水増しコンクリート、いわゆるシャブコンの解説と映像だった。たしかにプラントから工事現場に入って水を加えたらシャブコンには違いない。水を加えることが品質管理の方法として間違っていることはあんたの言うとおりだ。しかしね、水セメント比は決められているというところまでは良いけれど、それは打設部分によっても違うことは解説されない。どこかの生コンミキサー車が水を加えている映像が出るけれど、あの生コンミキサー車には 5.5m3 のコンクリートが入っているのよ。生コンミキサー車に付属している水タンクと蛇口からミキサーにちょろちょろ水を加えたってどれだけ水増しになるといいたいのか?その程度ではシャブコンにはならないでしょうに。それとコンクリートピースの圧縮強度試験の様子が映し出されて「シャブコンは通常のコンクリートの強度の 70% しか出ない」と言っていたけど普通とは水コンクリート比がいくらで設計強度がいくらのコンクリートのことを言っているのか?圧縮試験でピースは見事にはじけ飛んでキャスターが「キャー」とわざとらしく悲鳴を上げているけれど、どんなコンクリートだって設計強度以上の圧縮力を掛ければまさしく砕けてはじけ飛ぶのである。

 まるで水を加えたミキサー車のコンクリートがすべてそのようにはじけ飛んでそれがすべて危険なことのような映像描写なのには開いた口が塞がらない。それに現場の職人の面白おかしく喋る手抜き工事のインタビューが華を添えているのである。せめてプラントを出荷して30分で現場についたミキサーのコンクリート 1m3 に対してどの程度水を加えたらシャブコンという状態になり、設計強度が確保しにくくなるのかを解説するべきであろう。しかも映像と映像の間には専門家の解説が入るのだが、彼らには番組が肝心のポイントを伝えないことを伝えずにインタービューをとっていると推測できる。それを都合良く継ぎ接ぎ編集しているのはミエミエである。何処ぞの大学の教授による設計強度の 70% しか出ていないコンクリートの解説は前提になる比較基準値の解説が恐らくカットされたようで実に不自然だった。あるいは具体的な取材対象とは別にたんに設計強度の 70% しか出ていないコンクリートがどれほど危険であるかをしゃべらせたのかもしれない。報道したいアンサーを引き出すために愚かなテレビ屋が使う質問の手口とでも言えようか?学者ならそんな手口に乗せられないでいただきたいものだと思った。じっさいわたしが耐震強度の調査をして採取したコンクリートのテストピースは20年以上前の物件でも設計強度の 150% 以上出ているピースはざらにある。設計 24k/N に対して 36k/N なんてことは珍しくない。 36k/N のところが 70% でも 25.2k/N で設計強度を上回るのである。あのテレビを見ていると少しばかりの水を加えたコンクリートを使った建物がまるですべて山陽新幹線の橋梁のようになってしまうようなストーリーテラーぶりだった。

 そもそも塩分濃度の問題で起きた山陽新幹線の橋梁のしかも調査中、または補修中のショッキングな部分の映像と、いわゆるシャブコンとその結果によるコンクリート圧縮強度の問題が何故に A ⊃ B ( A ならば B ) のような命題式で連結されて語られなければならないのか?塩分濃度と水セメント比の問題は決して A ⊃ B に代入出来るシロモノではあり得ない。つまりこういうことだ。

「A・塩分濃度が高いコンクリート使うと山陽新幹線の橋梁のような結果になる」

    ⊃ (ならば)

「B・水セメント比の高いシャブコンを使うとコンクリート圧縮強度が設計値の70%しかでない」

AとB、それぞれは真だが ⊃ で結ぶ命題ではないのである。オマエら全然分かってないんじゃないか?分かってないヤツがキャーキャー叫び、それにまた何にも分かっていないナカニシレイが解説してただただ何にも分かっていない視聴者の不安を煽るってのは如何なものだろうかと思った。大橋巨泉さんがスポーツと音楽を除けばテレビってもうアタマの悪い人しか視ていないんじゃないの?って仰っていたけれど、ならばなおさらちゃんと素人に分かりやすく正確な情報を流すのがメディアのつとめではなかろうか?


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