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白川静博士の訃報に触れて

白川静博士ご逝去

 白川静博士が逝去された。享年96歳。甲骨文字や金石文など草創期の漢字の成立の背後、あるいは基層に宗教的、呪術的なものを据えた博士の研究理論体系は、ある意味漢字文化の形成に対してのロマンに貫かれることになった。またあらゆる学閥から自由なポジションに身を置き「俺の仕事を邪魔する権利は誰にもない」と一人研究に打ち込んだ博士の姿をかの高橋和巳が「S教授の研究室」は大学紛争時の全学封鎖の際も「それまでと全く同様、午後11時まで煌々と電気がついて、地道な研究に励まれ続けていると聞く」と書き綴ったように、犀の角のようにただ一人歩む姿もロマンとして学界とは一線を画した知識人からそのご成果以上に支持されていたようにも思う。

 学界からの批判は学問はあくまで論理的に文化という人情の集大成を突破して行かなくてならぬという論理的な面からがその中心思想にあったと信じたいが、博士が前述したような知識人から評価されて行くにつれ学界独特の偏狭なジェラシーが首を擡げたことも強ち否定は出来まい。わたしのようなものにそのご業績を云々する力量も資格もないが「中国は簡体字、韓国はハングルが主流になり、漢字文化圏は四分五裂した。アジアが分裂して争うのは不自然極まりないこと」という博士の持論の引用した前半部分が中国や韓国と比べていまだ漢字を大切に扱う我が国の文化の優位性として協調され「美しい国日本」などという傲慢な美意識と結びつくことに危惧は持つものの、戦後日本が生んだ博士独特の漢字の研究体系を国家の利益とは切り離した教育の現場で純粋培養されるべき教養の一環として、そのご業績が活かされていくことを切に願う。ご冥福をお祈りしたい。

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生きとし生けるものが幸せでありますように。

元記事(ngp-mac.com/kumarin)へのコメント

鮎川龍人鮎川龍人 2006/11/1 18:03

ある意味、学者としての理想の生き方でしたね。


御歳から言っても大往生ですし、あれだけ潔い、しかも納得できる研究態度を貫けたのは素晴らしいし、羨ましい限りです。

でっかい辞書にはお世話になりました。


たしか作家の宮城谷昌光さんも白川先生の愛読者なのでは?


ご冥福をお祈り致します・・・

小林龍一小林龍一 2006/11/1 20:03

私の家にも白川先生の辞書はあります。

大変なご著書だと思いました。専門外の私にも分かります。


小林龍一 品質管理専攻

kumarinkumarin 2006/11/2 5:51

鮎川さま、小林さま。

コメントありがとうございます。


花園大の佐々木閑教授は一人自らの研究領域に立ち向かい黙々と歩む研究者たちをゴータマ・ブッダの言葉を借りて「犀の角たち」と最大限の賛辞を送り、一冊の本にまでされました。


大蔵出版 (2006/07) ISBN: 480433064X


白川先生もまさしくそのような人だったと思います。鮎川さまが言われるように「学者としての理想の生き方」そのものの生涯だったでしょう。


そして鮎川さまも小林さまもまさしくその「犀の角」と称されるに相応しいと思うので、敬意を込めてそう形容させていただきました。


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生きとし生けるものが幸せでありますように。

名無しさん名無しさん 2006/11/3 22:03

白川先生の辞書もDVDも持っています。

友達にそのDVD「白川静の漢字の世界」を貸そうか、と言ったら顔を赤らめていました。何か勘違いしたようです。偉大な方でした。a