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田口汎さん 逝去 (2006.9.1訂正版)

安らかにお眠り下さい

 異色の仏教者であり平和主義者、権力ばかりでなく独善に陥りがちな市民運動にも愛情を持ちながらも容赦のない批判を展開した自由人 田口汎 さんが逝去された。田口さんは哲学者を志すも家庭の事情から出版界へと進まれ鈴木健二気くばりのすすめ (〔正〕) (講談社文庫) (asin:4061835858) 』を企画してベストセラーに押し上げたことで知られる。田口さんは、NHKブックスの創刊に関わり「法隆寺を支えた木」、「仏像—心とかたち—」などの企画・編集、また「第三の波」(アルビン・トフラー著)、「劫火を見た」、「きみはヒロシマを見たか」、「歴史への招待」等多数の書籍・シリーズの企画・編集等に携わった。また編集者としてだけでなく仏像の研究にも取り組まれ、編集者、研究者として多数の研究者と交流を深め、仏教学者の中村元奈良康明仏教美術研究の佐和隆研らとの交流も生まれ、自らも仏像に関する著作を残された。仏教学への博識さは専門の学者に引けを取らないばかりでなく仏像誕生については独特の学説をお持ちで学界を二分するガンダーラ起源説とマトゥラー起源説の対立のなかでマトゥラー起源説を強く推された。

 10歳の時に被爆直後のヒロシマを目の当たりにし原水爆問題には並々ならぬ関心を寄せられていた。晩年始められたブログ『何が問題か?What is on mind,now?』では読み応えのある仏教関連の記事のほか非常にバランス感覚に優れた政治問題の記事も執筆され楽しみにしていた読者も多いのではないかと思う。そのブログは 7月17日の『刈羽原発の設計ミス』が遺稿となってしまった。特に【佛教造形論】として取り上げられた仏像マトゥラー起源説の展開が未完に終わってしまったことはわたしとしては残念でならない。ここ数年は健康状態も芳しくなかったご様子でブログの更新も滞りがちでわたし自身も心配だった旨を記している(創価学会・公明党はまだキャスティングボードなのか)。一時は回復されたご様子で JANJAN 時代のわたしの論敵であった奥様ともご旅行を楽しまれたご様子だったが遂に力尽きられた。仏教関係者のわたしたちは直接ではなくたとえ人を介してであれ田口さんの生前の恩を受けているといえる。そしてそのご恩に報いるのは日本仏教の正しい方向性を探り深めていくことだと信じる。享年72才はあまりにお若い。全力疾走で人生を駆け抜けられたのか?心からご冥福をお祈りしたい。

願わくはこの功徳を以て普く一切に施し我ら衆生とともに仏道を成ぜん、南無妙法蓮華経

気くばりのすすめ (〔正〕) (講談社文庫)

気くばりのすすめ (〔正〕) (講談社文庫)

釈尊との対話 (NHKブックス)

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仏像は生きている

仏像は生きている