太古の地球はリズムとメロディーが溢れていた
鰻重の山椒のようになくてはならない音楽の香辛料
Percussionist Notch :
M6 + SUMMICRON 35mm F2.0 f/2.8 1/30sec FujiColor NATURA 1600 + Adobe PS CS3 でモノクロ化
- ノッチは素敵なパーカショニスト。どんなミュージシャンにも瞬時に合わせてしまう。変速リズムだってお茶の子さいさい、直ぐに主導権を握ってしまうのだ。けれど主役までは奪わない。出来た女房のような存在かも。そのノッチーがうちの街に越してくる。
音楽は進化の過程でことばの副産物として誕生したというのが、ことばを以て四つ足から立ち上がった人間が考える音楽誕生の常識的ストーリー。しかし、認知考古学の第一人者として、人類の心の進化を追究しつづけるスティーヴン・ミズンは、絶滅した人類・ネアンデルタールの発達した咽頭と大きな脳容量から全体的、多様式的、操作的、音楽的、ミメシス的な太古の地球に響きわたるネアンデルタールの歌声を「Hmmmmm」(Holistic:全体的 multi-modal:多様式的 manipulative:操作的 musical:音楽的 mimetic:ミメシス的)と名付け、狩猟に赴き、異性を口説き、子どもをあやす彼らの歌声を語る。そして我々の直接的な先祖ホモ・サピエンスでは「Hmmmmm」を前駆として事象を具体的に指示する記号と、その論理的な組み合わせルールを内包する言語を獲得しより明確な意思疎通が可能になり、音楽は感情表現の手段として熟成されてきたものだと言う。
考えてもみよう。リズムとメロディーは我々の鼓動の上になりたち言語を介さずに意志も感情も表現する。そして我々ホモサピエンスがネアンデルタールに優る部分は言語を開発したことだ。言語は時にはより細やかな意志や感情の表現が可能だ。しかし現代の音楽も感情の表出やIDL(Infant Directed Language)の際に有用な役割を果たしているしそれは「Hmmmmm」の名残であるとミズンは言う。ならばパーカッションはその言語よりも細やかにリズムとメロディーに奥行きと幅を付加するとは言えないか。ネアンデルタールの音楽がシンプルで美しいものだったとすればホモサピエンスの音楽はより奥行きと幅を持っている。それは脳の発達によってより細やかな表現を嗜好するようになったからだ。パーカッション、まるで鰻の山椒のようになくてはならない音楽の香辛料だ。
- 作者: スティーヴンミズン,Steven Mithen,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/06
- メディア: 単行本
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