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fILOFAX

気負わずスローなアナログ生活

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fILOFAX : D-LUX2 + DC Vario-Elmarit 28-105mm F2.8 f/2.8 1/5sec. ISO400 WB AUTO

 今までスケジュール管理はずっとコンピュータでやってきた。しかし、どうしたってPCにすぐ書き込めないタイミングで発生する約束や予定もあり、そのつど小さな手帳に書き込んでみるのだがPCに転記し忘れたりすることもある。携帯電話のPDA機能も試みたが小さすぎていまいち入力に手間が掛かる。

 アシスタントの女の子にすべてを任せるという手を使ったこともある。が四六時中一緒にいるわけではないからこれも中途半端になる。それにせっかく彼女が書き込んでくれたアポを僕が見もせずに忘れてしまえば彼女が責められてしまうこともあったし。で結局統一がとれずにいろいろなところに書き込みっぱなしのアポやTODOが未履行のままほったらかしにされ、相手からの催促があってあわててとりかかるというていたらく。

 先日ふと手に取った内田ユキオさんの写真集にかれは写真家として独立したときからファイロファクスを使っているという記述が目にとまった。そうか、ファイロファクスかぁ!ファイロファクスは僕がまだ若い頃カーグラフィック編集長をされていた故小林章太郎さんから薦められたことがあるのだ。

「これはいいよ、アレンジが自由自在だから持ち歩く習慣さえ付いてしまえばアポも仕事も、決まった順から書き込んでいけるし、住所録や電話帳もあとからアレンジが聞くから書き直す手間がない。移動中に思いついたことや見聞したことを書き留めたりと、あとから記事を書くときに使うメモ帳にもなるんだ。ちょっと高いけどこれはいい。」

 小林さんの頃の当時は当然携帯電話などないし勿論PDAもPCもない。せいぜいワープロがあったころの時代だ。僕らは日常の諸々をせっせと手帳に書き込み、その手帳を見ながら文章の清書をワープロでやっていた時代。僕にとってこれはいいと思ったファイロファクスは、買えない金額ではなかったものの、手を出すのは勇気がいるような値段だった。システム手帳にウン万円……。

 なんとか仕事を片付けようとしているときに、定時に帰路につくお気に入りの彼女に、トイレにでも立つような振りをしながらサッと渡すシステム手帳のメモ用紙。「○○駅で降りて待ってて!」。このメモ用紙にファイロファクスのロゴがあればすっごくかっこいいよな、なんてウン万円と葛藤の日々がよみがえる。なんか妙に懐かしくって内田さんのような若い方がファイロファクスを使いこなしていることが嬉しくなった。

 彼がライカ使いであるということよりファイロファクス使いであるということが頼もしいじゃないか。僕のノートPCはPANASONICのCF-R5 でこれバッテリーの持ちがえらく良いので夜 家に帰ることが前提なら充電器は持ち歩かない。だからカメラのメインをライカに変えてしまった今ではかなり普段の荷物はコンパクトになった。それならこれは少しアナログな生活に戻ろうか、なんか楽しそうじゃないかと閃く。

 携帯電話もカメラもノートPCもPDAも、みんな充電器がなければ始まらない。だから今は1泊家を空けるのだってバッグの中には何台もの充電池が必要だ。なんとかしたいよなと思う矢先。だいいち、いつ何時充電器が使えないことに遭遇するかだって分からないじゃないか。それに万が一女の子と一晩過ごすなんてことになったとき(まずほとんどならないと思うが - 爆 -)明日の仕事を何一つ心配することもない。別れ際にこんどこそ渡せる「愛してる」と書いたファイロファクスのロゴ入りメモ用紙。

 すっかり忘れていたファイロファクスを思い出し、思い立ったら吉日と取扱店などをよく調べもせずに通勤途中の丸善に寄ってみた。ところが残念ながら取り扱っていない。僕は丸善の垢抜けた雰囲気と奥でお茶が飲めるのが好きなんだけどなぁ。古い洋書など手にとってカフェでハヤシライスを食べながら芥川龍之介気分に浸ってみたり。

 僕は丸善の二階の書棚にストリントベルグの「伝説」を見つけ、二三頁づつ目を通した。それは僕の経験と大差のないことを書いたものだつた。のみならず黄いろい表紙をしてゐた。僕は「伝説」を書棚へ戻し、今度は殆ど手当り次第に厚い本を一冊引きずり出した。しかしこの本も挿し画の一枚に僕等人間と変りのない、目鼻のある歯車ばかり並べてゐた。(それは或独逸(ドイツ)人の集めた精神病者の画集だつた。)僕はいつか憂欝の中に反抗的精神の起るのを感じ、やぶれかぶれになつた賭博狂のやうにいろいろの本を開いて行つた。が、なぜかどの本も必ず文章か挿し画かの中に多少の針を隠してゐた。どの本も?--僕は何度も読み返した「マダム・ボヴアリイ」を手にとつた時さへ、畢竟(ひつきやう)僕自身も中産階級のムツシウ・ボヴアリイに外ならないのを感じた。・・・・・・芥川龍之介 「歯車」三夜より

 そこで家を通り越して伊東屋まで行くことにした。正攻法で行ったのでは閉店時間に間に合わない。お金持ちの子供で有名な私立学園大学がある私鉄駅から伊藤屋のはいるショッピングセンターがある並行するもう一つの私鉄の駅までタクシーを飛ばす。すっかり大きく立派な駅になった学園の街は君と出会ったところだね、なんて考えながら、蛍の光が流れるなか間一髪、丸善から伊東屋への移動中にすっかり恋にも似た感情を抱いてしまったファイロファクスを買い求めた。自分の手でTODOや予定を書き込むと、何故か自分がなんだって一人で出来ように感じるから不思議だ。ささやかなことですっと上がるモチベーション。やっと君に会えたような感覚で僕は優しい革に包まれた真新しいファイロファクスを抱きしめた。

♪BGM while writing

Live Session (iTunes Exclusive) - EP

Grandes Éxitos - Sevillanas y Rumbas

Grandes Exitos

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いつもカメラが

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芥川龍之介全集〈6〉 (ちくま文庫)

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