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時の流れは無常、人の心も常ならず

DOI さんのサヨナラ会

Decantage

Decantage: K10D + SIGMA 17-70mm F2.8-4.5DC MACRO

 根津でいてふ舎というワインバーをやっていらした DOI さんが代々木上原に移ってまたたく間に半年。「どうぞ、根津そのままにやってください」と招かれていてふ舎をたたみ上原に移った。店のオープンはちょうど僕の脳梗塞が見つかったときで酒が飲めなかった僕は一度も訪ねじまいだった。身体が回復すれば酒も飲めるさ、そのうち行かなくちゃと思っていた矢先、時の流れは無常、人の心は常ならず、諸事情あって DOI さんは再び転身することになった。根津のままが経営者には面白く無かったらしいが、時を経れば状況も変わる。別に最初の話と変わってしまったからと言って経営者を非難するつもりもない。そんなことで根津時代からの知人 I氏からメールを戴き DOI さんの店に10月も押し詰まったハロウィンの晩に始めて行ってきた。

 盛り上がれば帰りは遅くなるだろうし、どちらにせよ酔うほど酒は飲めないから ERIKO III で出かけた。246で三軒茶屋までは結構出かけるのであっという間に着く。そこから下北沢経由で代々木上原までが殆ど行かない道、異様に長く感じたが距離は実際5km程度しかない。その証拠に帰りは上原から三茶まであっという間だった。今日の話では余談だが ERIKO III は絶好調。二子橋を渡ったところの信号でいつものように赤信号無視のバカローディに抜かされたが瀬田の登りであっという間にそのローディに追いつく。ヤツは後ろを振り返りながら必死である(笑)。その胸中は如何に?なんでクロスバイクやらMTBやらが俺様に追いつくんだ?なんであろうよ、きっと。だってその充血した目付きは敵意剥き出しだったもの、あっはっは。

 別に僕の脚力が君より優れているわけではない。ただ ERIKO III が君のバイクより軽いだけなんだ。それとローギァードでクロスレシオな ERIKO III のセッティングが君のバイクより登りで有利なだけなんだけどな。バイク乗りならそれくらい見抜けよ!この前、大倉山の登りでローディを煽ってその先でヤツが事故ってしまったので今回は1車分離れたところで僕はペダルを回す脚の力を抜いた。それなのにヤツは246のバイパスと合流する瀬田温泉の前の赤信号でまたまた信号無視して走り去った。頼むから事故るなよ!バカなお前が死んだって知りはしないが、こちらとしては後味が悪いじゃないか。まぁ信号無視するようなヤツにそんな人の心を分かれと言うほうが無理な話だろうが。それにしても ERIKO III は絶好調。帰ってサイコンを見ると最高速度が 49km になっている。いったいどこでそんなスピード出たんだ?

 代々木上原に着いて僕はまず ERIKO III を Le Depart に預けた。DOI さんのところはバーだから食べ物は無いだろうと Le Depart でパスタを食べてから出かけた。ワインバーは2階で、ってそもそもなんでバーを2階に出すの?って感じなのだが民家の改造らしくいかにもハイヒールの女性には不親切で危険な急階段をギシギシと踏みしめながら昇って店に入る。さながらホーンテッドマンションである。扉を開けると、おいおい、もう根津時代からの知った顔ばかり。店は満席だったがこれまた根津時代からの旧知の女性達があっちのほうから椅子を引っ張り出してあっという間にカウンターに僕の場所を作ってくれた。もう多謝。久しぶりにお会いする DOI さんは裁けた表情で飄々と客にサービスしている。お元気そうで一安心。それよりこちらの病気を皆に心配されてしまう、恐縮。

 話は弾んであっという間に時が過ぎていく。だけどね、大人の客は良いね。普通サヨナラ会と言えば昔話に華が咲いて、あとで振り返って見れば時の無常に虚しくなるものだが今日の客達は今のそして明日の話を弾ませている。そりゃそうだよ、人は過去に生きるのではなく今日を生きるのだから。僕はと言えば I氏持ち込みの 1966 を少し戴いただけであとは水と珈琲でうち解けて盛り上がれる技量がすっかり身についた、まったく我ながらアッパレ。今を語りながらも場所はすっかりで根津で、みんな DOI さんのもてなしが大好きなんだね。誰かが「明日からこの店どうなるの」とその日始めてこの店の話が出た。だけど反応はなし「別に店なんかどうでも良いじゃない。それより DOI さんがいる店にまた行きたいね」って今日集まった全員がそんなこと言えば、この店の作り出すアトモスフィア、経営者には面白くないわな。

 密かに充実したひととき。足を踏み入れれば縺れた糸は時放たれ、毛細血管に充満する元気を貰う。そう、この雰囲気だったんだよね、いてふ舎さんって。夜も更けて DOI さんがいる店での再会を期して皆それぞれ帰路に就いていく。また DOI さんに会えるのが当たり前のように。今の時代、ワインバーを続けていくのは大変なことだと思う。世の健康ブームと酒離れ、アジアの台頭によるワイン価格の高騰、そして不景気による外食離れ、しかもレストランほど実用性も無い。DOI さんだって表情以上に悩みや苦しみがあるに違いない。でもそんなことをオクビにも出さずに飄々と酒を注ぎ、人の話を聴き、時には叱り、時には褒めて、時には相づちを打つ、その姿に感動した。そして学ばさせていただいた。客とバーテンダーが創る木の精の歌。この歌はあなたが唄う歌ではない。そして私が唄う歌でもない。

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