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A fulfilled life - Jean Michel Kaneko Photograhie

知足是福。音楽家・演奏会の写真がメインのカメラマン、公開OKの作品は掲載中。IT企業役員、趣味で料理の YouTuber、趣味は仕事と同様大切でロードバイクと料理とワインフリーク。

Leica Minilux with SUMMARIT 40mm 最終章

ミニルクス とうとう臨終しました

古民家喫茶 アート&カフェ こぐま
古民家喫茶 アート&カフェ こぐま
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 昨日記したように向島~浅草撮影会のいよいよ終盤、夜の浅草を撮影して~というときに Leica Minilux が Error2 を出して一切の操作を受け付けなくなった。レンズの沈胴も出来なくなったのだが一度電池を撮り出して再充填したところレンズの沈胴だけは受け付けた。これはLeica Minilux にはいつかやって来る知られた故障でシャッター制御の断線らしく修理代金はこのカメラを中古で2台も買えてしまうほどのものなのである。

鳩の街 I
古民家喫茶こぐま I
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 惜しいのはこのカメラに付いている SUMMARIT 40mm F2.4 というレンズでこれがなかなかの描写をしてくれる。このカメラを始めて知った時は、なんせ手元に SUMMARIT L 50mm F1.5 があるものだから SUMMARIT を名乗るなら開放F値はせめて暗くても1.8くらいにしてくれよ!と思ったモノだが実際の描写はいかにもオールドライカなフレアとゴーストを楽しませてくれる 50mm F1.5 とは一線を画す現代的なレンズでそのこってりとした描写は SUMMICRON M 35mm にも通じるモノがあり SUMMICRON を特級に例えるならばボルドー好きがクリームのように滑らかに熟れたメドックのクリュブルジョワに出会うようなワクワクする喜びがあったのだ。

鳩の街 II
鳩の街 II
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 ここのところこのカメラでは露出設定を1~2段アンダーにして長く現像する所謂増感で撮っていた。それはトライエックスを暗めに定着させて粒子感を出すためでもあったのだが逆に1段明るめに撮る減感で撮ると、なにも T-MAX を使わずともかなり滑らかな中間調のグラデーションを得られることも分かってきてこの向島~浅草撮影会ではごく普通の露出で絞り優先で撮って(シャッター速度1/250が最速なので昼間は限度があるのだが)この40mm広角で背景ボケや流し撮りも楽しんでみようと撮影に臨んだ。これも何かこのカメラが「僕、もうそろそろ逝くから」と囁やいていたのを僕の中の撮影本能が聞きつけたのかもしれないw

祭りだーい!
祭りだーい!
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 この SUMMARIT 40mm は業界が本格的にデジタルに移行する直前のカメラだからおそらくフィルムに最適化された銀塩向けレンズの光学技術の絶頂期のレンズであろう。ゆえにかカラーの写りもヌケも立体感も文句はないのだが、やはり撮影者の意図をふんだんに配したモノクロームの写りがとっても良いレンズである。

アリゾナキッチン I
アリゾナキッチン I
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 で、そのモノクロが自在に駆れるとなってくると、どうにも自分で物語を仕込んだようなカットが撮りたくなってくるから不思議なものである。僕の場合に限って言えばデジタルカメラだとこういう気分には絶対になれない。それは電化製品ではないマニュファクチュアリングの賜としてのカメラ、レンズとフィルム、そしてアルチザニックな現像というモノとヒトの繫がりがこういう気分の高揚に影響しているのは否定できないし、それが単なる都市伝説的な神話に依拠した拘りにしか過ぎないとしてもなのだ。

アリゾナキッチン II
アリゾナキッチン II
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 勿論だからといって写真とは物語がないと駄目云々等という「写真とは」論を展開するつもりなどは毛頭無い。寧ろ僕は「写真には」○○な可能性が~云々という問いを自らに立てるなら有益だが写真に本質論などないと思っているのでジャーナリスティックな「写真とは」という問いは吐き気がするほど嫌いである。その身近な例を挙げれば「写真とはかくかくしかじかである」という議論の前にこんなのは写真ではないと森山大道さんを廃斥したジャーナリズムはパリでの評価で一転し森山さんを絶賛しているじゃないか。そして森山さんはその作品よりも既にそのヒト大道さん自身がブランドとしてDAIDO MORIYAMA という商品にされてしまっている。これは大道さんの意には大いに反しているんじゃないか。

初音小路飲食街
初音小路飲食街
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 これだけあらゆる処に写真が氾濫し個人用から商用、有名無名の写真家作品百花繚乱の写真を普遍的に貫く写真の本質などもはや存在のしようがない。つまり写真なんて好きなように撮れば良いし意味づけは自分の心に留めておけば良い。で、共感を得たいヒトは発表し、得たくないヒトは発表せず、売りたい人は売り、売りたくない人は売らない。絵画性に拘るも良し、方法論に拘るも良し、技術に拘るも良し、心だけで撮るも良し。こんなにありふれた日常的な記録手段の使い方の価値観を他人様に押しつけようってのがそもそもの間違いなのである。コンドームだってピルだってリングだって、あるいは腹の上、顔射。方法論は違えど結果は一つ、どれを選択するかは個人の価値観に委ねられるべきである。

跳ねた後の楽しみ
跳ねた後の楽しみ
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 昨日はキュビズムとか構成主義とかに少し触れたけれど本当にそれをやりたければ絵画をやればよいじゃないの?とか写真に文学性を求めるなら文学やれば?ってことにもなってしまうようにも思うのだが、じゃ、なぜ写真に拘るのかと言えば手軽な楽しさがあるからってことになるのだろうか。絵画や彫刻、あるいは文学ほど手間と労力はかからないものの撮影後に現像とプリント、あるいはデスクトップでの絵作りという適度な労力とスキルが要求される。それが丁度手頃なのだ。それでは生死ギリギリまで自己を追い込んだ写真家に失礼じゃないかと言う声も聞こえてくるがさに非ず。手軽に楽しむのは僕であってあなたに非ずだからだ。あなたが自己の実存ギリギリまで追い込んで写真をやるならそれは素晴らしいことだがそれを他人に押しつけるべきではないってことだ。例えていえば僕にとって写真を撮ることは好きな役者の芝居を見るようなものでその後の現像やプリントは跳ねた後の小屋の前で役者たちと芝居の興奮やさわりを団欒するようなものなのかも知れない。

人力車 流し撮り
人力車 流し撮り
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 おっと、話が逸れすぎた、閑話休題。これ絞り開放で黄信号にかかわらず突っ込む人力車を流し撮り。こういうことがちゃんと出来るから好きなんですよ Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4。勿論少し日が陰ってきたからって条件付なんだが。それでこのレンズを生かす方法はないものかとググってみれば在るんですね~☆救世主『宮崎光学』さん。ここでは Minilux の SUMMARIT だけでなくさまざまなレンズをライカMマウントに改造してくれる。しかし残念ながら GR レンズの改造はなかった。おそらく鏡胴が細すぎるかフランジバックがライカMより短いか、なんだろう。ともかく SUMMARIT 40mm を生かす方法は見つかった。ただし結構高くて料金は55k円。まぁ仕方がないか。

一人より二人
一人より二人
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 こっちも絞り開放、しかも撮影最短距離の70cm近くまで寄っているんで背景は綺麗にボケてくれた。ほとんど夕方だったからね。つまりシャッター速度が稼げればこのレンズの使いみちはグッと広がる。最低1/1000秒は欲しい、出来れば1/2000。1/1000秒ならミノルタCLEがコンパクトでよさげ。1/2000だと BESSA R2 か M7。あんまり高いのはもう一台 Minilux を買わずにこのレンズを生かすという主旨に反するので CLE を物色するか。

旅莊 一富士
旅莊 一富士
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 なんにせよ僕の撮影スタイルの中ではオールラウンドなカメラだった。こうして最後の撮影からピックアップして眺めているとこのカメラと歩いた街並みが思い起こされる。形あるものはいつか壊れる。一富士という旅館もそう。浅草で一富士を見つけた時は驚いたが小学生の同級の女の子の家が一富士という連れ込みをやっていた。家業を紹介した時の彼女の恥ずかしそうな顔を今でも思い出すことが出来る。連れ込み温泉マークが生業とて恥じることではないが小学生の女の娘には嫌なことだったのだろう。その一富士も今はなくマンションに建て変わっている。それとて部屋を2時間単位で貸すか2年単位で貸すかの違いでしかなかろうに。

虎キチ
虎キチ
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 残念、名前を控えてくれば良かった、伝法院通りに出る直前だったと思う虎キチ居酒屋?後悔先に立たずでぐぐっても出てこない。この日はほんとうに何か予感めいた声でも聞いたのだろうか。一枚一枚をかなり丁寧に撮っている自分がいる。もちろん他の方みればなんの変哲もないモノクロ写真のオンパレードに過ぎないかも知れないのだが…

浅草寺 ライトアップ
浅草寺 ライトアップ
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 Kodak 400TX
 これが Minilux のボディにくっついてこのレンズ最後の仕事になった。これから神谷バーでも寄って帰ろうということになって仲見世通りの一本隅田川寄りを歩きながら目にとまったシーンを撮ろうとしたら Error2。ミニルクスは一切の操作を受け付けなくなった。万事休す。予想されたこととは言え経済的損失はショックだけどね。Minilux よ、ありがとう。そして最後までアタシのとんちんかんな駄文に付き合ってくれたあなたにもありがとう!

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