建築写真の現場から、建築写真の今
ハービー山口さんとのお話から
photo by Kaneko Ryogen Photography
先日ハービー山口さんの写真展 「物語、岩手の子どもたち」へ伺いハービーさんとお話しさせていただいたときに建築写真の今をお話しさせていただきました。そこへ「国境なきこどもたち」のスタッフの方も興味津々で加わられて…
photo by Kaneko Ryogen Photography
ハービーさんが木箱で出来たようなとても大きなカメラであおりを入れて撮るんだよね~と話されると「国境なきこどもたち」のスタッフの方も目が爛々。そこでこちらは実際の現状を。大きな木箱で出来たようなカメラは日本独特の写真スタジオの師弟関係まっさかりのころ先生の指示に従って弟子がセッティングする時代のカメラです(勿論例外はあって今でもそういう大判カメラで時代に応じて弟子は取らずに一人で撮影さされている方もいらしゃいます)。ロケハン打ち合わせで決めた場所に夜明けから(下手をすれば前日の終電で)重い機材を運び込みセッティングするのは弟子の仕事。先生はちょうど良い時間にやってくるのです。しかし自動露出の一眼レフカメラがそんな世界に終焉をもたらしました。
photo by Kaneko Ryogen Photography
大きな木箱で出来たようなカメラの次に主流になったのはシフト機能がついた広角レンズでペンタックスのものが有名です。フィルム時代は僕もペンタクッスのシフトレンズ(smc PENTAX SHIFT 28mm 1:3.5)をずいぶん使いました(使わされ?)。しかし28mmのそのレンズはペンタックスのAPS-Cのデジカメでは敷地の広いところでは良いのですが通常の現場ではやはり少し画角が狭過ぎます。すべておさまりきれずにこの写真のようになったりします w
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そのころも師弟関係は続き機材を弟子が運んでセッティングするのは変わりませんでした。アドビの Photoshop が登場し広告業界やDTPの世界で当たり前に使われるようになっても建築写真にはしばらく普及しませんでした。仕事仲間にはそのペンタのシフトレンズにマウントアダプターをつけてキャノンのフルサイズ機で使っているひともいますけどね。建築写真の業界に大きく圧力をかけたのが住宅減税が終わりマンション建設もピークを過ぎた建設不況の始まりです。建築請け負い高の圧縮は芸術家気取りの写真スタジオにそっぽを向きだしたのです。
photo by Kaneko Ryogen Photography
建築写真は競争にさらされるようになり展示に命をかけるような芸術写真ではありえなくなったのです(勿論その領域に入る写真はあるとは思いますが)。時間もコストも競争力をつけなければ顧客(主に設計事務所と建設会社)はリピートしてくれません。そんな逆風が一挙にうちの業界にも Photoshop を普及させる原動力になりました。
photo by Kaneko Ryogen Photography
そんな僕の説明にハービーさんもスタッフの方も納得してくださったようです、でも寂しい話ではありますね。シフトレンズを使ったような仕上がりにおさめていくわけですが何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。最近の首都圏は益々敷地に余裕がなくなってペンタックスデジイチで仕事をするうちでは12mmなんていう35mmフィルム16mm相当の超広角レンズを使ったりします。でも実際に仕事の写真を仕上げるために普段シフトレンズで撮影してシフトレンズの特性やら限界やらを身体に叩き込んでおくことは重要です。だってお客さんはフォトショで補正しているなんて知りません。彼らが写真を見て不自然だな?と感じたらジエンド、セフィニなんですからw