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Pelikan 万年筆を買った

fILOFAXの空白のページを君への想いで埋め尽くそう 

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 ペリカンの万年筆*1を買った。自分では MontBlanc 買ったつもりでいたのに到着したのは Pelikan だった。とりあえずインクを入れて書きだしてみる。安い買い物ではないので書き心地などフィールは大切だと思う。ちょっとペン先が硬い気がするがこうして書いているうちにインクのノリの良さと相まってペン先も抵抗なく紙を滑るようになってくる。良い筆記用具は書いていること自体を楽しくしてくれる。面白いようにスラスラと書くことが浮かんでくる。fILOFAX と Pelikan、ある意味理想の組み合わせだ。

 書く程にスムーズ、Pelikan。思えば少年の頃始めて手にした Pelikan はもう30年近くも前にバングラディッシュの飛行機事故で亡くなった友人が父親から譲り受けたものを見せてくれたときだ。その書き心地にびっくりした。そのフィールが今、まるで昨日の事のように甦る。この万年筆を若いうちから所有してもっと字を書けばよかったのにと思う。僕の家は中学生の息子に Pelikan を買い与えるほど裕福ではなかったのだ。こうしてよい道具に啓発されるといくら清貧がとかなんとかいっても貧困は良いものとは思えない。無論お金があって裕福でもそれが質の良い投資をされなければ意味が無いが、お金は無いよりは有った方が良いに決まっている。

 

f:id:KumarinX:20080220225023j:plain  子供のために何に投資をするか、それは親に求められる知性なのではないか。僕の子供の世代が僕の世代になって、既に僕らが逝ってしまったとき、うちの親は頑張り屋だったけど知性はイマイチだったよねなんて懐かしい笑い話のタネにはされたくないものだ。持つ喜びと使う喜び。この万年筆があれば字を練習しようという気持ちを駆り立てる。一流の道具とは、道具を使う二流の人間ですら啓蒙してしまうほどの力を持つ。実は我が子ではないが3歳の娘も使う時が来ると考えて同じペリカンをその母親である君にプレゼントすることにした。素敵な字を書く女性に成長してくれることを夢見ながら。そして自分は Pelikan で fILOFAX の空白のページを埋め尽くしてみる。気持ちを込めて字を書いて、その文字が実現される力を持つように丹精を込めながら。

 やがて、 fILOFAX の空白のページが君への想いで埋め尽くされたら、君に手紙を書こう。

お元気ですか?僕の放浪の旅もまもなく終わりを告げます。

 いままでこんなに自由に旅を続けられたのも君の理解と愛があったおかげだと心から感謝しています。そしていよいよ僕の道程は鼻先を君の住む街に向けることになります。

 

 僕は君の待つ街に帰るんじゃないんです。君の待つ街へとまた新たな出発をするんです。大学通りプラタナスはそろそろ新しい葉を付けだしたでしょうか。石畳の上を君たち母子が手を繋いでカラコロカラコロと下駄をならして、夕暮れの街を白い息をはきながら家に向かう姿が目に浮かぶようです。この間送った写真、もうつきましたか?

 

 一緒に写っている赤い半被を着た女の子は日本からこちらにやって来た劇団の女の子です。後ろのちょんまげ姿の男の人が座長さんで彼女の旦那さんです。彼女さぁ、若いように見えるけど実はもう君と同い年なんだって。殺陣剣の立ち回りや爆転がものすごく旨くって、髪を掻き上げたうなじと横顔があんまり君に似ているものだから一緒に写真に写ってもらいました。

 

 なぜか無性に君に会いたくなりました。いま僕はオーバーアマガウというミュンヘンから列車で約2時間の田舎町にいます。フレスコ画で飾られた家々がとてもチャーミングな小さな街です。まだまだ朝は冷え込んで途轍もなく寒いけど空気はとっても爽やかで君の住む街ととても良く似ています。君も寒い盆地の街で同じ空気を吸っているんだなと嬉しくなって思いっきり風を抱きしめてみました。

 

 バレンタインデーのチョコレート、フランクフルトで受け取りました。ありがとう!思いがけずとても嬉しかった。こちらは寒いから味もかたちもちゃんとしていたよ。3月14日迄にチョコレートのお礼にこの手紙にこちらで買った Pelikan を同封しました。ボルドーレッドの可愛いヤツです。気に入って貰えたらとても嬉しい。いつか君の娘も使えるくらい長持ちするから。そしてもう少しだけ僕には時間を下さい。生きているうちに君との約束だけは果たしたいから。では、ごきげんよう!

*1:Pelikan は Leica と並ぶドイツクラフトマンシップの真骨頂だ。最初は MontBlanc を買おうと思ったのだが後述のように少年時代を思い出して Pelikan にしたのに自分では商品が到着するまで MontBlanc を買ったつもりでいた。これも小さな脳梗塞の影響で記憶のアーカイブがどこかで断絶しているのだろうか。