顔たち、ところどころ Visages Villages

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アニエス・ヴァルダの最新作「顔たち、ところどころ Visages Villages 」を見てきました。ヌーベル・バーグの祖母と言われ、映画監督になる前は写真家として活動していたアニエスがストリートアートのプロジェクトで世界的に注目されるJRと組んで制作した、JRのプロジェクトとその思想をテーマに旅をしながら、アニエス自身もアガンジュマンしていく長編ドキュメンタリー映画。JRが「Face2Face」「Women are Heroes」「Inside Out Project」に取り組んだ被写体へのアプローチをそのまま再現しながら描かれていくストーリーにはワクワクするし、見終わってとても幸せな気持ちになれる作品。

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題材は現実の淡々とした描写にあるのだが被写体たちの日常を非日常へとドラスティックに変え、それをまた日常に押し戻していく捉え方が、ヌーベル・バーグの祖母アニエスの真骨頂かも知れない。
二人のすれ違いから出会いまでをコミカルに描く映像がプロローグとして展開され、映画は本題に入っていく。二人はノルマンディー、アルプ=コート・ダジュール、オー=ド=フランスと旅をしていくが、その映像もツール・ド・フランスのコース沿いの風景のレースのない日の美しい日常を彷彿とさせる。ヴァルダはJRのプロジェクトを再現させて彼の魅力を引き出しながも、JRの祖母に会いに行ったり、かつて知り合った人々と再会したり、作家ナタリー・サロートの家や写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの墓などを訪れることで旅の主導権を握っていく。

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そしてラストはフランスのスノッブたちの時代をリードし、盟友とも言えるジャン=リュック・ゴダールの家を訪ねて映画は終わるけれど、映画の外できっと旅は続いていく。「Regardez le lac!」とアニエスがJRに囁くエンデイングの映像はブレッソンやドアノーの美しい郊外の写真を思い出させてくれ、それだけでも絶品。つまるところアニエスとJRの完璧なまでの即興的なヴィサージュ(顔)とヴィラージュ(村)のコラージュであり共同作業(パタージュ)と主題だけで韻まで踏んでしまう作品。そして最後にその作品にゴダールがスパイスを加えて映画の完成度をさらに押し上げているけれど、そのゴダールの手法は見てのお楽しみ!

こんなにフランスのアートとしての写真、映像満載の映画でもあるのに、前回この映画を紹介した投稿には、普段FBで僕の周りで写真だ、アートだと発言している人たちからは不思議なことになんの反応もなかった。ゴーマン噛ませば、所詮そんなもんなんだよね、日本の自称写真家たち(笑)。唯一、那須さんだけが「この映画見たい!」とコメントがあり、さすがの目の付け所と思った。

映画は第70回カンヌ国際映画祭コンペティション外で上映され]、ルイユ・ドール賞を獲得。第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネート。2017バンクーバー国際映画祭国際ドキュメンタリー賞。『タイム』誌では2017年のトップテン作品の1本。Rotten Tomatoesでは86件の批評家レビューで支持率は100%、平均点は8.9/10。Metacriticでは19件のレビューに基づき加重平均値は95/100。

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