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A fulfilled life - Jean Michel Kaneko Photograhie

知足是福。音楽家・演奏会の写真がメインのカメラマン、公開OKの作品は掲載中。IT企業役員、趣味で料理の YouTuber、趣味は仕事と同様大切でロードバイクと料理とワインフリーク。

イスラムの赤い星

911テロの真相は?安定しないイラクに再度捧げる

Wed, 22 May 2003 19:55: GMT バミューダ

 一切の通信を遮断した旧ソ連製の原子力弾道ミサイル潜水艦941型 - 西側コードネーム「タイフーン」- 一隻が無事北極の深海からグリーンランド北米大陸の谷底を隠密里にくぐり抜け大西洋のアメリカ東海岸側、バミューダ海域の深海に音も立てずにホバリングしていた薄暗いコントロール・アタッカー・センターにはソナーの走査音だけが静かに響き、ディスプレイから等間隔に発する緑色の光りがダークオレンジ色の暗い照明に照らされる船内の各機器を揺れる水面の光りの反射のように彩っていた。

「時間だ」艦長のムジャヘディン・ビンアルシビ大佐が腕時計を見やりながら呟くと潜航士官のムスタファ・アルハウサウィ少佐が静かに頷き応えた。

「ついに我々が世界史上初めてこの武器を実戦に使うのですね。」

「余計な感慨は無用だ。これは任務だ。任務なのだ。」ビンアルシビ艦長は自分に言い聞かせるようにアルハウサウィ少佐を諭すとマイクのスイッチをオンにした。

「諸君!いよいよ作戦開始だ。我々は5分後には浮上する。さいわいここまでなんのアタックもないと言うことは敵が我々の行動に気が付いていないか、さもなければいつものようにロシア海軍の定期的行動と踏んで様子を見ているだけに違いない。我々がここで浮上すればまもなく米潜水艦のソナーの補足を受け、すぐさま退去要請のピンガーが発せられるだろう。そのまま作戦を続行すれば敵はすぐさま攻撃を仕掛けてくる。しかしそこで躊躇してはならない。諸君は私の指示通りに普段どおりに訓練の成果を発揮してくれればよい。高度戦闘配備だ。アッラーのご加護を!」

「キャプテンこそ」アルハウサウィ少佐が自分と同じようにやはり感慨を抱いているかに見えたビンアルシビ艦長にウインクするとビンアルシビは髭面の顎を撫でながら片目をつぶって返しニヤリと笑った。

「深度500mまで浮上する。極力静かにだ。バラスト、前部トリムタンク排水!」

「前部トリムタンク排水!アイアイサー」

Sat, 01 Sep. 2001 10:00: LOCAL ウラジオストック・・・9.11テロ10日前

 アゼルバイジャン出身のイスラムニスト、マフムード・ビンアルシビがオマル・シェイクという男を通じてパキスタンの諜報機関であるISI(統合情報局)のマフムード・アーメド局長から20万ドルの資金を受け取り、ぞくぞくと配転でやって来る旧ソ連海軍に所属していたウクライナアルバニアベラルーシカザフスタンの潜水艦乗りやイラン海軍の潜水艦乗りを従えて、ロシア海軍の戦略核抑止システムの一環である旧ソ連製の原子力弾道ミサイル潜水艦941型「タイフーン」の艦長に昇格したのはあのニューヨーク・テロの僅か10日前、2001年の9月1日のことであった。彼はこの資金の出所が、そのさらに1カ月前の2001年7月、アフタブ・アンサリというドバイ在住のインド人が率いるイスラム過激派系がインドのカルカッタで富豪の靴工場経営者を誘拐し、そのときの身代金83万ドルの一部であると確信した。さらに次々とやって来た新しい部下達を選択し、ビンアルシビの部下に付けた男は間違いなくウラジオストック海軍軍令部のイワン・ニコライビッチ・ドリトフ提督であった。ある日ドリトフはビンアルシビに艦長昇格の辞令を交付した後こう言ったのだ。

「カルカッタの売り上げはもう届いたか」

ビンアルシビは驚いた。頷くだけで何も言えなかった。

ソ連邦が崩壊した後アメリカは自由にやりすぎている。しかし今は何も特別なことはない。君は軍が選んだ精鋭達と今までと同じようにタイフーンの運行と訓練を続けることだ。やがて栄誉ある命令が下るだろう。・・・しっかりやることだ。下がってよい。」

敬礼をすませ部屋を出ようとするビンアルシビは背後から聞こえた提督の声に自分の任務を確信した。

「同志ビンアルシビ。君にアッラーのご加護を!これが新しいソ連軍の合い言葉だ、もうレーニンではない。」

Mon, 12 May 2003 10:00: GMT ワシントン

 アメリカ国内は厭戦気分が高まっていった。バグダッドを包囲し、いよいよ首都陥落も時間の問題と誰も思ったとき、僅か10万の米英軍は100万のイラク共和国防衛軍とイスラムゲリラに包囲されほぼ全滅の憂き目にあったのである。しかしイラクの民間人や公共機関の被害も甚だしくその死者は民間人、軍人を含めれば22万人を越えた。カミカゼ特攻を思わせる民兵の自爆攻撃に発狂した米英軍の兵士達はアラブ人と見れば無差別に殺戮を繰り返し、いよいよバグダッドに入城、あわや首都陥落と言うときに100万のイスラムゲリラと共和国防衛軍に包囲されたのだった。周辺各国に潜んでいたイスラム民兵達が続々とバグダットに集結した。この状況下の中ではついに米国もバグダッドへの劣化ウラン弾による爆撃を断念せざるを得ず、最新の化学兵器を誇る米英軍もゲリラ攻撃と自爆攻撃をも厭わない人海戦術の前に、あのベトナム戦争のように惨憺たる結果になった。イランやサウジ、トルコ、パキスタンといった米国に一定の理解を示したイスラム系の国々も米国に停戦を申し入れるようになった。これらの国々の人々は政府のアメリカへの協力表明や中立表明とは裏腹に明らかにイラクを指示しているし、だからこそこれらの国々の大衆の中でイスラムゲリラはその勢力を温存し、それどころかいつかはやってくるアメリカとの最終ジハードに向けて勢力も体力も増殖することが出来たのである。

TUE, 13 May 2003 10:00: GMT ニューヨーク

 無惨な米国人兵士の惨殺死体の映像は軍部や政府の要請によりCNNやABCがアメリカ国内での放送を自粛したが、インターネットを通じて毎日米国の家庭に配信された。マイクロソフトWindows Media PlayerAppleのQuick Timeは米国人兵士の惨殺死体のムービーのために使われたのだった。急転直下の戦闘状況にアメリカ軍はまったく窮地に追い込まれ補給の目処は全く立たなかった。戦局の急展開にもともと平和連合と自らを提起しアメリカのイラク攻撃に反対したフランス、ドイツはイタリア、ポルトガル、ロシア、中国 らを巻き込んで、中国やロシアと同様に一斉にアメリカを非難しだした。開戦当初のアメリカ主導のイラク戦後復旧計画はと当然このままでは頓挫する。ここはアメリカを非難し、親イラクを表明し停戦の主導権を握れば戦後復旧利権が手にはいるのだから当然である。アメリカに追随しいているのはイギリス、ギリシャ、スペイン、ポーランドチェコ の他には日本、韓国、タイ、オーストラリア、ニュージーランドである。北朝鮮問題を抱える日本、韓国はともかく、他はパパブッシュ時代の国務長官、ベーカーによって提唱、その後クリントンが推進したAPECを中核とする太平洋共同体構想のお陰だった。しかし、戦争を継続するためのパートナーとしては力不足は否めない。アメリカは外交的にもピンチにたった。

Wed, 14 May 2003 10:00: GMT キャンプ・デービット

 それでもブッシュは叫び続けるしかなかった。厭戦ムードの高まった国民にこう語りかけた。

「国民の皆さん。我々は確かに今非常につらい。合衆国は貴重な多くの若者の命を失った。亡くなられた兵士達には私は心からお悔やみを述べたい。特にご遺族の方々のやるせなさを思えば私の胸は掻きむしられるように痛みます。勿論私のかける言葉など皆さんには何のお力添えにはならないかも知れません。しかし私は誇りに思うことが出来る。自由と民主主義と正義とアメリカの為に自らの意志でテロリストとの戦いに赴いた方々が合衆国にはこんなにもたくさんいるのです。命を落とした兵士の死を無駄にすることはできません。自由と民主主義の為に我々は最後まで戦わなくてはならない。ここで我々が正義の戦いから手を引いてしまったなら、またあの忌々しい9.11のようなテロを根絶することは出来ないのだ。少し辛抱して再び攻勢に出よう。かのマッカーサー元帥が"I Shall Return"と誓って再びバターンによみがえったように。合衆国に栄光荒れ。」

 勇ましい演説とは裏腹にブッシュは半ば自失呆然だった。イラクというよりイスラム陣営を甘く見た。ISI(パキスタン統合情報局)のマフムード・アーメドがオマル・シェイクを通じて、9.11実行犯の主犯格だったモハマド・アッタにテロ資金を送金していたことが、FBIの調べで明らかになったとき、FBIに走査を続行させ9.11をストップさせておけばよかった。9月11日当日の防空体制を異様に貧弱にし、普通なら防げた旅客機のビル突入を、此処キャンプ・デイビットでトイレにこもり空軍の出動を遅らせて防げずに終わらせたのは自分だったのだ。もとはといえばパパブッシュがタカ派国防総省の中東政策を牛耳る ポール・ウォルフォウィッツ らと冷戦後のアメリカが進むべき方向性を主張するシンクタンクとしてPNAC(アメリカの新世紀のためのプロジェクト)を設立。PNAC は「アメリカの世界支配力を確固たるものにするためには、かつての真珠湾攻撃(アメリカの世界支配史から見ると、日本を戦争に誘発して太平洋支配を確立できるきっかけとなった事件)のような、新事態を誘発する大惨事が必要ではないか」と主張した。1993年の1回目の世界貿易センタービル爆破事件や1995年のオクラホマ連邦ビル爆破事件の際、CIAを通じてFBIの捜査に横やりをいれ、予防策や捜査を十分に行わせず、真犯人と思えるパキスタン人や中東系の容疑者を野放しにして、その存在自体をマスコミの目から隠した。なんのことはない、自分を含め歴代プレジデントはPNACの主張に従っただけなのだ。ソ連の消滅というアメリカにとっては先方の一方的な都合で冷戦が終わってしまった今、冷戦時代と似たような「正義のアメリカ」VS「悪の枢軸」という巨大な対立イメージを定着させ、自由と民主主義を守る正義のためならアメリカは戦略的に重要だと思われる世界の国々に対し米軍を駐留させることができる。景気が悪化しても連邦政府の予算を拡大することが出来るし、ブッシュ家と結びつきが深い軍需産業も潤う。定期的にその悪を戦争によって叩けば我が家は富と名声を両方手に入れるのだ。これがパパの教えだった。だからこそ政権中枢をパパの時代からの主要スタッフで固めてきたわけだし、一昨年のアフガンでのタリバン狩り=聖なる鷹作戦に引き続き、ここでサダムの頸を取れば我が家の富も名声も確固たるものになるはずだったのだ。しかし今後1~2カ月のうちに戦局を展開出来なかったら、ウォルフォウィッツらが仕掛けた巨大な悪事が次々と暴露されていき、9.11事件の真相も公表されていくかもしれない。テキサス石油利権とブッシュ政権との関係が注目されながら迷宮入りしてしまったエンロン事件も、再びスキャンダルとして吹き出してくるだろう。ブッシュ政権は弾劾されて退陣に追い込まれてしまうだろう。

Fri, 16 May 2003 14:00: LOCAL 東京(GMT 16日早朝4時)

 アメリカの劣勢を好機と睨んだ北朝鮮はいつものように意味不明の空砲ミサイルを何発か日本海に打ち込んでいた。海上では再び韓国との武力衝突も起こしていた。中国もまた台湾海峡での海軍演習を再開し台湾や日本に揺さぶりをかけた。朝日が相も変わらず、北朝鮮や中国の行為はあくまで演習であり日本への脅威とはならないのだという論調を繰り返し、読売や産経がヒステリックに日本軍事的危機論をまくし立てた。だが国民の不安は不毛な新聞各社のイデオロギーベースの論争にはもううんざりしていた。むしろビビッドに映像を送りつけるテレビに釘付けになっていた。イラクでのアメリカ軍敗退の映像と中国の台湾海峡での海軍演習、北朝鮮のミサイルの弾道を描くコンピュータグラフィックスや韓国との武力衝突の映像が相乗効果になって、戦争というイメージが一人歩きを始めた。この日、日経平均は5000円を割り、さらに企業倒産に拍車をかけたから国民はいよいよパニックになり、内政は風雲急を告げる。この現実に内閣服官房長官安倍晋三はニヤリとした。いまこそ自衛隊を国軍に昇格させるチャンスだ。

 

国会では民主党菅直人が代表質問に入った。

「総理は3月米英のイラク攻撃開始の際、日米同盟に基づいて米国を支援するとおっしゃった。既に昨年来インド洋に展開している自衛隊イージス艦はその同盟国のアメリカにいくらの燃料を提供したのですか?もう既に億を超えているというじゃないですか。これは軍事同盟だ。しかし我が国はいまそんなことにお金を使っている場合ですか?日本海では何がおきているんです?総理が一番ご存じのハズだ。日本海にはイージス艦が一隻しか配備されていないんですよ。もう一隻は長期メンテナンス中だと言うじゃないですか?インド洋から引き上げて日本海に2隻配備するべきだ。自衛隊は日本の先取防衛に専念するべきだ。なにも私は日米同盟がダメだといっているのではない。国民の判断を仰がないでの米国追随が民主主義ではないと申し上げている。正確な情報を国民に提示し、いくつかの選択肢とそれに伴うリスクもあわせて示して国民の判断を仰ぐといった姿勢が必要でしょう。これが「第三の道」の外交姿勢だ。 さらに我が党の調査によればアメリカが韓国にイラクへの1万人の陸軍兵士の派遣を要請したという情報が入った。かりにそういう要請が我がニッポンにきたらまた国民の判断を仰がずにズルズルと後方支援と称して自衛隊を派遣するおつもりですか?」

-----内閣総理大臣小泉純一郎

「前からも申しあげているように民主党の発言はイラク対応について米国を批判するだけで、北朝鮮問題を前にして日米同盟関係をまったく軽視している。今現状、日本海で危機がありそうだから余計に日米の同盟関係が重要なんだ。インド洋からイージス艦を引き上げるなんてとんでもない。日本海の哨戒は空からという方法だってある。日本海のことを言えば日米で協調して必要にして充分な警戒配備体制でやっている。またインド洋での燃料を提供の費用についてはテロ防止法に基づいて会計期間ごとにきちっと国会で報告申し上げる。もう一点、我が国に自衛隊派遣の要請ということですが、まだ来てもいない要請をどうするかなんてのはお答え出来ない。」小泉はやや顔を紅潮させ興奮気味に答弁した。頭の中は安陪からささやかれたテロ防止法の拡大解釈運用を緊急時にあわせて強行突破することで一杯だったのだ。

Sat, 17 May 2003 14:00: GMT ワシントン

 ラムズフェルドは太平洋共同体構想を生かすべきだとブッシュに提言した。アメリカからは無理しても派遣できるのはあと20万人だろう。そこで韓国、タイ、オーストラリア、ニュージーランドからあわせて5万人の兵力を展開する。日本は最悪お金だけでもよい。そして再びアメリカ主導の終戦に持っていき、利益配分からフランスをはじめとする平和連合を排除して太平洋共同体のほうに配分すればクソみたいな奴らだ、必ず乗ってくる。夜間にステルス戦闘機から旧ソ連製のスカッドを発射してイスラエルにぶち込み、イラクからの攻撃だと装い、イスラエル核兵器を使わせたらどうだ。アメリカの原子力潜水艦戦略核原潜の一部を除いてインド洋と大西洋の南に集結させる。陸上兵力の補給のタイミングに合わせて一挙に攻勢に出よう。ネズミ一匹生かさぬ絨毯爆撃だ。それと大統領、パゥエルにはお気を付けになった方がよい。ヤツは最近FBIやシラクと急接近している。それに国連安保理事会 でのしどろもどろの答弁はフランスやマスコミにわざと反戦ムードを盛り上げるためにやったとしか思えない。ヤツはあんなバカじゃないんだ。昨年の安全保障会議で強硬論を展開しこの戦争の主導権を握ろうとした。 ラムズフェルドはさらにここは民主主義の危機を訴えブッシュが太平洋共同体構想の各国を訪問、首脳会談でエサをまいて協力を取り付け、訪問国のテレビで協力を要請する演説をすることを薦めた。勿論欧州の平和連合各国もそのあと回っておく。戦局の展開によっては戦後を睨み方針を転換して協力する国家もあらわれるかも知れぬ。その国の国民に直接訴える---原始的だが第二次大戦の時にルーズベルトトゥルーマンチャーチル、ドゴール、スターリンらが取って効果を上げた方法だ。そして最後に分け前を与える奴らだけをどこかに集める。そう、今回はタイのプーケットどうだろう。プーケット宣言、これで大統領、貴方は再び米国民のいや世界の英雄だ。ブッシュはやっと安心したようにラムズフェルドを見上げた。

「戦争なんか悪いことに決まってるサ。世の中に戦争でしか解決できない問題などありゃしない。ただここに戦争で解決したいと思っているヤツがいるってことだけだ。」

「なかなか良くできたジョークだ。」二人はグラスを合わせた。

Sun, 18 May 2003 11:00: GMT パリ

 エリゼ宮の執務室でシラクはDGSE(対外保安総管理局)局長ジャン・ポール・スーリエとドン・ルイナールの注がれたグラスをおいた硝子テーブルを挟んで向き合っていた。実際シラクはここ最近の自分を取り巻く動きには満足していた。ムシャラク(パキスタン大統領)に表面上は解任されたとはいえは実質的はイスラム勢力の実験を握るISI(パキスタン統合情報局)のマフムード・アーメドの工作よろしく、仏大統領として40年ぶりにアルジェリアを訪問した。歓迎するイスラム教徒のアルジェリア人が100万人も集まり、その時アメリカに対して毅然とした態度を示したシラクは彼らから賞賛され英雄として扱われた。40年前に仏軍との血みどろの戦争で独立して以来、アルジェリア人はフランス人を嫌っていたはずだ。それなのに、アルジェ市内はフランス国旗やシラクのポスターであふれた。これこそアメリカと決別しあらたな世界秩序を建設するべくシラクがアーメドに提示した条件へのアーメドの回答だった。ジャン・ポールが口を開いた。

「ムッシュー・プレデュタン、アメリカのラムズフェルドから連絡がありブッシュが首脳会談を申し込んできている。しかもわざわざパリまでおいでになる。22日の夜8時過ぎの到着だそうだ。」

「なにを今更だ。どのみちコーリアやオーストラリア、ジャポンに金と兵力の約束を取り付け、それを手みやげに我が国にアメリカ陣営への寝返りを要請にくるのだろう。ちっぽけな石油利権を提示しながらな。ふん、くだらん。ブッシュ着陸の時がチャンスだな。その時にバグダットに潜入している特殊部隊を我が国の正規軍として表に出すんだ。とうぜんロシアにもパキスタンにもそうして貰おう。アーメドへ連絡して調整してくれ」

「ウィー、ムッシュー・プレデュタン、しかしジョアンヌ・コイズミ(ジョアンヌは仏語で黄色)はどう扱いましょう。」

「アメリカ主導が崩壊することが分かれば簡単に寝返るだろう。ジャポンのマネーをみすみす捨てることはない。ピョンヤンをターゲットに"ラ・トリオンファン"(フランス海軍原子力弾道ミサイル潜水艦)を日本海へ配備するとオファーしたらどうだ。シャトー・マルゴーを添えてな。ジャポンのマネーも投入できれば新しい油田の開発も石油精製のピッチもあがる。当面ロシアがその最大の顧客になるが、勤勉なジャップを中間管理職として投入すればイスラム系労働者のサボタージュを旨く解決してくれるだろう。一石二丁だよ。」

 その時執務室のホットラインが鳴った。電話の主はマフムード・アーメドからだった。

「ボン・ジュール、ムッシュー・プレデュタン。ブッシュが狂気に走った。米海軍のSSBN(原子力弾道ミサイル潜水艦)がぞくぞくとインド洋と大西洋南部に集結している。ご存知のようにイスラエルは今回の米軍の侵攻には憂慮している。今回のソースはMOSSAD(イスラエル中央情報局)からの垂れ込みなんだがイスラエルのふりをしてフィッシュ(潜水艦)かステルスでバグダットに核弾頭付きのトマホークをぶち込むらしい。そもそもはパウエルからMOSSADに連絡が入ったんだ。そこでパキスタン海軍からもウラがとれた。」

「ダコール(了解した)、ムッシュー。我が国から供給の"ダフネ"(フランスDCN社製の潜水艦)が大活躍だね。こちらでもウラをとって私とプーチンからバカブッシュに警告を出そう。あとちょうど良かった。ジャン・ポールに連絡させようとしていた所だったがブッシュが22日に東京を発ってパリにやって来る。ヤツが離陸したら暫定政府の樹立を発表しよう。そうすればフランスもロシアも協力を表明する。直ちにフランスもロシアも治安維持軍を派遣するがその夜には2万人のフランスとロシアの特殊部隊が治安維持先遣隊の正規軍に早変わりだ。」

「ダコール、ムッシュー・プレデュタン。人々は歓喜の声援で貴軍を迎え入れるだろう。全ては計画通りだ。アラ・プロシャンヌ・フォア(また連絡する)。チャオ。」

「チャオ。」

Mon, 19 May 2003 11:32: GMT シドニー上空 米大統領専用機

「ミスター・プレジデント、パウエル長官からホットラインです。」

「グッド、モーニン、ミスター・プレジデント、ロシアとフランスから連絡がありました。我が海軍の動きがMOSSADにキャッチされた。両国の大統領はとんでもない思い上がりだと立腹です。すでにロシアとフランス海軍のSSBN(原子力弾道ミサイル潜水艦)はニューヨークとワシントン、ロスアンジェルスをターゲットにセットされた。我々も在米海域の全駆逐艦と潜水艦に迎撃ミサイルをセットしました。ただMOSSADにキャッチされた以上計画は中止すべきです。フランスやロシア、中国のメディアに書かれたら我が国は外交上もさらなる打撃を受けます。」

「わかった。これからの首脳会談で陸上兵力の確保に最大限の努力をしよう。国内でも兵役だけでなく志願兵を寄り多く集めるようにしてくれ。更に大統領令でベトナムのときのような徴兵制をしけないか検討してくれ。国家の緊急事態だ。」

 

ブッシュは苦悩した。しかし引き下がるわけにはいかなかった。これから3日間でオーストラリア、フィリピン、タイ、韓国、日本と廻り出来るだけ多くの戦費と軍事力をかき集めなければならない。彼はスタイリストと共に説得力のある表情造りと演説の練習に打ち込んだ。こまかな実務はラムズフェルドが取り仕切ってくれる。国内は心配だがチェイニー副大統領とパウエルがいる。ラムズフェルドはパウエルを信用していないが、ブッシュから見れば国務長官のパウエルはもともと戦争には反対だが、大統領が決断したら躊躇しつつも命令だからと納得して戦う忠実な将軍でもあるのだ。何より彼はパパの頃からの側近じゃないか。やがて専用機はシドニーのオーストラリア空軍基地へ滑りこむように着陸した。

Mon, 22 May 2003 10:00: GMT 東京(現地時間:22日夕18時)

 小泉総理とのトップ会談を終えテレビを通じて日本国民に語りかけたブッシュはパリに向かって飛び去った。実際オーバーで芝居がかって内容のないブッシュの演説は一部を除いて日本人には大変不評であったものの、原子力攻撃空母"ニミッツ"を日本海に配備して北朝鮮の軍事的揺さぶりを抑止し、イラク戦後復興の建設事業を日本にも門戸解放を約束することで、4000万ドルの戦費負担と、自衛隊による兵站補給と後方支援を勝ち取りほぼ目標のどおりの成果を上げた。既に会談を終えたオーストラリア、フィリピン、タイ、韓国からもほぼ目標どおりの支援をとりつけ、オーストラリアやフィリピンからは早くも陸軍兵士の輸送船がクウェートに向けて出陣する準備が進められていた。米陸軍のほうはと言えば早くも有事の際の民間予備航空フリートとして徴用したアメリカン航空ボーイング747によって続々と兵力をクウェートに集結していた。ロシアとフランスによる抵抗で核によるバクダット攻撃を断念せざるを得なかったブッシュにとって陸上兵力のイラクへの早期結集の意志を示すことがロシアとフランスの譲歩させる条件だったからだ。ところがブッシュが離陸して5時間後、日本政府には寝耳に水のニュースが飛び込んできた。

Mon, 22 May 2003 15:00: GMT バクダット

 バクダット -- 100万人近い周辺イスラム諸国からの民兵やゲリラで英米軍を圧倒したバクダットでサハフ情報相を首班とする暫定政府が発足した。フセイン大統領は新政府によって逮捕され、捕虜になった米英軍の現地将校と共に戦後戦争犯罪人裁判にかけらるため、処刑はされずに暫定警察機構に身柄を拘束された。新政権はフランス、ロシア、ドイツ、パキスタンアルジェリアが支持、フランス政府とロシア政府は直ちに治安維持軍の派遣を決めフランスからは空輸で続々と兵士が到着。共和国防衛軍を中心とした現地軍と協力して治安維持と首都復興作業に着手した。  -- ロイター --

Mon, 22 May 2003 18:00: GMT パリ

 パリ -- フランスのシラク大統領は本日17時よりロシアのプーチン大統領、ドイツのシュルーダー首相と電話による会談を行い、サハフ情報相を首班とするイラク新政権を支持し、戦後復興に率先して協力する旨の「新パリ宣言」を発表した。「新パリ宣言」はその宣言に賛成し協力を申し出るイスラム諸国および平和連合として今回の英米の武力介入に反対した国家には宣言参加国として加わるよう要請していく国家間会議方式を採用する。更に同大統領は今後米英両国及び両国を支持、支援した各国に対してイラク政府が戦後賠償を請求した場合、これを積極的に支持してその実行を「新パリ宣言」参加各国で監視していく用意があることを発表した。

  -- インターファクス --

Mon, 22 May 2003 19:00: GMT ニューヨーク&ワシントンDC

 ニューヨーク -- 緊急開催された国連安全保障理事会はアメリカ、イギリスの棄権にも関わらず「新パリ宣言」を支持する決議を採択した。ニューヨーク市民はおおむねこれを歓迎しており市内には紙吹雪が舞っている。現在専用機でパリに向かっているブッシュ大統領の対応が注目される。

  -- ロイター --

 ホワイトハウスの前でも反戦集会が開かれ、多くの市民や学生が繰り出していた。国務長官のパウエルはFBI本部でロバート・ムラー 長官と対峙していた。

「このままでは米国は全てを失い失墜してしまう。この際、国防総省のポール・ウォルフォウィッツ とブッシュの9.11以来の悪事をさらけ出し二人を国家反逆罪と共同謀議で逮捕したらどうだ。これ以上ファザコンを放置おくことは出来まい。」

「しかし此処まで来たらフランスがすんなり身柄を引き渡すかどうかだ。パリ訪問を中止してイギリスに着陸は出来ないものだろうか。SIS(MI6 英国秘密情報局)とSS(MI5 英国国家保安局)の協力は得られないだろうか。」

「条件としてはMI5との共同逮捕でいい。時間がないんだ。」

「とりあえず共同逮捕は無理だ。それじゃブレアがうんと言わないだろう。イギリスで給油して引き返えし(ワシントンDC)させよう。」

Mon, 22 May 2003 19:45: GMT ドーバー上空 米大統領専用機

 ブッシュは狼狽していた。ニュースは次々に入ってくる。なにが「新パリ宣言」だ、クソ!地団駄を踏んだ。歯ぎしりして奥歯が病んだ。しかし本国のスタッフからの動きはなかった。なにをやっているんだ。彼はこのときほど自分に判断力がないことを悔やんだ。いつも素直に従ってきたパパブッシュをいつか超えてやろうと突き進みはしたものの、やはり自分にはパパを越えることは出来ないのかと何回も自問した。そうだパパを越えることなんか全然出来ていない。「大統領になったらデンタルクリニックで定期的に奥歯のメンテナンスを忘れないことだ」パパがアドバイスしてくれたこんな簡単なことも自分は出来てない。なにか行き詰まるとこうしてパパの言葉を思い出してるじゃないか。病める奥歯に思いを馳せながらブッシュは苦笑した。するそのときホットラインがなった。

「グッド イブニング、ミスター・プレジデント。パリ訪問は中止です。ロンドンへ向かって下さい。当局との連絡はとれています。オーヴァー。」

 しかし状況はすぐに展廻した。この情報をキャッチしたDGSE(フランス対外保安総管理局)の手配したメンバーがヒースロー空港のロビーを爆破したのだった。戦後への対応をアメリカとは決別して独自の路線を模索していたブレア内閣はこれを理由にブッシュ受け入れ拒否を決めて通告してきた。やはりパリか。沈黙に包まれる専用機にシラクからホットラインが入った。

「グッド イブニング、ミスター・プレジデント。フランスのシラクです。どうぞご安心なされてフランスへお越し下さい。ちなみにこの電話は普通の無線を平文で流しています。したがって世界中の通信社が傍受しているでしょう。我が国が貴殿の安全をお守りする証拠みたいなものですよ。ハッハッハ。空港は万全の警備体制ですよ。フランス人は伝統的に過ちに対して寛容な民族です。わたくしがお迎えにあがりましょう。シー ユー レイター、ミスター・プレジデント。ボン ボヤージュ!」

 躊躇している余裕はなかった。CIAにシラク発言が本当に公開電波であったかを確認すると専用機はノーズをパリ に向けた。


Mon, 22 May 2003 11:32: 19:50: GMT 東京 首相官邸(現地時間:翌23日早朝3時50分)

ブッシュ大統領とはまだ連絡が付かないのか」沈黙の続く早朝の官邸で小泉はイライラしながら吐き捨てるように言った。

 その時、執務室の電話が鳴り響き、側にいた安倍晋三内閣官房副長官)がすぐに受話器を取った。

「ボン ソワ、ああ失礼、そちらは早朝だったね。ボン ジュール、ムッシュー、アベ。フランスのシラクです。プライムミニスター・コイズミにお伝え頂たい。イラクの新政府と新パリ宣言加盟各国は貴国に負担した戦費の割合に応じて戦後復旧の損害賠償を請求することになる。あなた方は63年前と同じ過ちを犯した。勿論米国もだがね。すなわち、63年前、貴国のプライムミニスター・コノエとジェネラル・トウジョウはバスに乗り遅れるなとばかりにナチスと手を結んだ。ところがそんなバスは走ってはいなかったんだ。走らないバスに乗り遅れるもクソもない。その走らないバスにさえ乗らなかったら貴国は全体主義悪の枢軸などと呼ばれて裁かれることもなかっただろう。今回もまったく同じことだ。しかしまだ救いはある。貴国は直接手を下していない。アジアの盟主としての貴国の節度ある対応を期待している。ここではなるべく早いほうが良いとしか言えないがね。まさか一世紀の間に二人ものプライムミニスターを被告席に座らせたくはないだろう。これは私とプーチンからのアドヴァイスだよ。」とシラクの電話は一方的に用件をしゃべると楽しそうに笑いながら切れた。

 これだけ尽くしてきたのにまたもや米国からなしのつぶてだ。そればかりかフランスから脅迫までされるとは。しかし1945年以来日本の体制はこんな事態をまったく予想せずにやってきた。今の事態を冷静に分析ししかるべき道を提案できる人材は政府の廻りにはいなかった。閣議でもアテになる閣僚など一人もいなかった。扇千景国土交通大臣)や川口順子(外務大臣)など小泉より動揺し福田康夫内閣官房長官)や石原伸晃行政改革担当・規制改革担当大臣)の失笑を買った。


Wed, 22 May 2003 19:58: GMT バミューダ ロシア戦略原潜タイフーン

「メインバラスト排水!」

「メインバラスト排水!アイアイサー!」

「浮上!」艦長のビンアルシビ静かに言った。

「キャプテン!38度60分、米潜水艦と思われるフィッシュからピンガーです!」

「ほっておけ、無視だ!どうせそのうち問いかけが入る。ラウンチ!浮上中にSS-N-20 スタージョン(大陸間弾道弾ミサイル)の発射準備を確認しろ!ソナー室!プレイリーマスカー(気泡を発生させ艦内の作業音が外部に漏れるのを遮断する)、オン!」

「プレイリーマスカー、オン!、アイアイサー!」

「キャプテン!米海軍ロスアンジェルスから打電です!」

「目標深度まではあとどれくらいだ!」

「間もなくです。」

「よし目標深度500m到達後、機関停止!ホバリング。それから無線をあけろ!」

「ハロー、ロシア戦略原潜タイフーン!こちらは米海軍戦略原潜ロスアンジェルス、キャプテンのトーマス・リッジウェイ大佐だ。貴艦の位置は特定できている。貴艦の行動は通常の行動の範囲と了解してよろしいか?」

「ハロー、米海軍戦略原潜ロスアンジェルス、よろしい、我々は貴艦に攻撃の意志はない。浮上してこれから帰港する。グッド、ラック!」そういって通信機をオフにしたビンアルシビがついに命令を下した。

「ラウンチ!SS-N-20、全門発射だ!」

「全門発射、アイアイサー!」

「よし、そのままグリーン海峡に向けて全速、前進!ソナー!ロスアンジェルスの走行音を最大音量で流せ!」

「アイアイサー!キャプテン、ロスアンジェルスの走行音を最大音量で流します。」

「ラウンチ!こんどはSS-N-9にアルミチャフ弾頭(小さなアルミ片を拡散して敵のホーミングを妨害する)を装着、6門発射して上空1000mで爆破だ!」

「アイアイサー!SS-N-9にアルミチャフ弾頭発射!」


Wed, 22 May 2003 20:00: GMT バミューダ 米海軍戦略原潜ロスアンジェルス

「キャプテン、タイフーンのラウンチが開きました。何か発射している模様です。」

「わかった、直ちに音響を分析しろ!」

「キャプテン、信じられません。奴らが放ったのはSS-N-20 スタージョンです。」

「なに!バラスト!前部トリムタンク、メインバラスト共に排水だ。急浮上するぞ!ラウンチ!直ちにトライデント(潜水艦発射弾道ミサイル)にソナーからの音響をインプットしろ!ホーミング誘導でスタージョンが大気圏に再突入する前に核爆破する!プレジデントの許可をとるから直ちに発射準備に移れ!」

「アイアイサー!キャプテン。」

「キャプテン!プレジデント・ブッシュ応答しません!電波が乱反射しています。専用機が着陸中と思われます。!」

「通信!もう一度トライしろ!」

「キャプテン!ダメです!応答しません!相変わらず電波が乱反射しています!」

「わかった!私が責任を負う!ラウンチ、トライデントを全門発射だ!」

「全門発射、アイアイサー!」ロスアンジェルスに緊張が走った。

「よし!ラウンチ!こんどは魚雷発射管にハープーン(対艦ミサイル)を全門セットしろ。敵の走行音をホーミングしろ!気の狂ったロシア野郎!のドテッ腹に8発のハープーンをお見舞いしてやるぜ。」

「キャプテン!ハープーン発射準備OKです。」

「ハープーン発射!」

「キャプテン!タイフーンから打電です!」

「よし、通信回線をオープンしろ!」

「ハロー!ミスター、トーマス・リッジウェイ。君は核戦争の基本を忘れたね。君にキャプテンの資格はないよ。だから敢えてミスター、トーマス・リッジウェイだ。ハッハッハ。我々は君が思っているようなロシア潜水艦ではない。我々の艦はレッド・スター・オブ・イスラムイスラムの赤い星だ。アッラーの国から奢れるアメリカを征伐にやってきたのだ。私はキャプテンのムジャヘディン・ビンアルシビ大佐だ。ミスター、リッジウェイ。我々はアメリカに直接手を下したモハマド・アッタのようにバカではない。我々の発射した20発のSS-N-20 スタージョンには核弾頭など装着していないのだ。その分今までのSS-N-20より約20%高速に飛ぶがね。ちょっと慌てたようだね、リッジウェイ君。その空砲は4発ずつ、ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、ロスアンジェルス、サンフランシスコに向かって飛んでいる。核弾頭を装着した君の24発のトライデントは我々のスタージョンに追いつくことは出来ない。2分30秒後にはまずニューヨークが廃墟と化すだろう。君たち自身の核兵器によってな。そして5分以内にはワシントンDC、シカゴ、ロスアンジェルス、サンフランシスコも同じことになる。しかし君たちの国の技術力を持ってすればロスアンジェルス、サンフランシスコくらいは救えるのじゃないかな。本来優れたキャプテンならそうすることだろう。しかし君にはもう時間がない。君の発射したハープーンは君達自身をホーミングしているのだ。まもなく君たちはバミューダの海の藻屑と化す。まぁ、同じく我々も生きて地上には帰れまいがな。おそらく世界中の潜水艦から集中砲火を浴びるだろう(笑)。一足先にアッラーのもとで待っていてくれたまえ。何かの縁で知り合った仲だ。死んでしまえばアメリカもイスラムもない。あの世では仲良くやろうじゃないか!」

「キャプテン!8発のミサイルが本艦をめがけて飛んできます。5秒後に激突します!」

「なに!前部トリムを強制排水して艦を垂直に立てろ!機関!全速浮上だ!」

Wed, 22 May 2003 20:02: GMT パリ シャルル・ドゴール空港 米大統領専用機

 ようやく繋がったバミューダ海域の原潜ロスアンジェルスからの無線は突然の轟音と共に途絶えた。がっくりと肩を落としたブッシュとラムズフェルドが顔を見合わせた。

「ニューヨークはあと30秒で終わりか、ワシントンもだ。ロスアンジェルス、サンフランシスコを救う方法はないのか」

 ブッシュの消え入りそうな声の問いにラムズフェルドは目を閉じたまま力無く首を横に振った。ブッシュは目の前のコーヒーカップを手に取ると一気に飲み干した。左目に突かれたような激痛が走った。

「あ、痛!最近くたびれてコーヒーを飲むといつも左目に激痛が走るんだ。だけどワシントンの眼科医にはもういけないな。」溜息をつくとブッシュは左瞼をさすりながらラムズフェルドを見て苦笑いした。

 ラムズフェルドは少し含み笑いをしながらこう応えた。

「いえ、いえ、ミスター・プレジデント。そのことならワシントンまで行く必要はありません。スプーンをカップからお出しなさい。」こんどは二人で顔を見合わせ笑った。

 大統領専用機はスピードを落とし滑走路から外れると誘導されるままターミナルに向かうと静かに停止した。そのときブッシュには遠い南西の空に閃光のような光りが走ったのが見えたような気がした。

Sat, 05 Apr. 2003 15:00: GMT 東京(現地時間:5日夜23時)

 イラクの戦争報道を見ていたはずの私はいつの間にかウトウトし、ふっと目が覚めた。なんだ、夢か。そりゃそうだ。こんなバカなことが起こるわけがない。私は上半身を起こすと目の前にあったコーヒーカップをとって一気に飲み干した。あ、痛。左目に突かれたような激痛が走った。しまった。スプーンを取り出すのを忘れた。左瞼をさすりながら立ち上がるとキッチンに向かい湯を沸かしスパゲティーを茹で始めた。日本は平和である。  

 -- おわり --

このバカな夢を見る基本になったと思われる文献

沈黙の艦隊(1) (講談社漫画文庫) - かわぐちかいじ -

  全32巻. コミックモーニング(講談社) 1988年44号~1996年13号に連載

現代の潜水艦 - 学研 -

  (世界の現用潜水艦 その戦力と機能を最新のデータと写真で徹底分析) (株)学研 歴史群像別冊 現代 の潜水艦 B5 版 186ページ ?2100+税雑誌コード 69611-77 ISBN4-05-602446-4 C9431

ゴルゴ13 (Volume102) 偽りの星条旗 (SPコミックスコンパクト) - さいとうたかを -

  全128巻. リード社

田中宇の 国際ニュース解説

  フリーの国際情勢解説者、 田中 宇(たなか・さかい) が、独自の視点で世界を斬る時事問題の分析記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。

沈黙の艦隊(1) (講談社漫画文庫)

沈黙の艦隊(1) (講談社漫画文庫)


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