チェニジア料理 Hannibal Deux
非植民人たちも取り入れたフランス美食術
夏の厚い真っ盛りの日曜日に神宮前の北アフリカ料理店『Hannibal Deux』へ行ってきました。今年の夏の暑さはそれはもう耐え難く週末でも殆ど地元ですませることが多かったのですがうちでも面白いテーマがあれば出かけようということになります。この店、前は普通のフランス料理店で5~6年前に一度行ったことがありますがきっとたいしたことがなかったのか、あるいはありふれたフランス料理だったのか行ったと言うことを覚えているだけで内容は全く記憶がありません。
- 北アフリカ風のキッシュ、バジルソース
- Gris d'Hammamett チュニジア独特のロゼワインの総称が「Gris」。グルナッシュ、サンソー、カリニャンのブレンドで南仏のロゼワインを彷彿させるスタイリッシュでフレッシュな辛口ロゼ。
- Harissa と書いてアリッサと読む。北アフリカの唐辛子ペースト。パリのアラブ料理店でも必ずと言って良いほど登場する。とくにクスクスとは定番のカップル。
- カラマーリ(ヤリイカ)のサラダ。
それだけフランス料理が日常化してしまっているということなのかも知れませんが所詮どんなにフランス料理が良い料理であると論理的に積み上げたところでそれは欧州人の論理であって東洋人、あるいはアジア人である僕たちのDNAにはアジアンなスパイスの美味しさが刻み込まれていてそれがフランス料理よりアジアのテイストに近いアフリカ料理に引きつけられる理由なのかも。少なくとも僕には洗練されたフランス料理よりスパイシーな北アフリカ料理のほうがずっと好きです。
- 聖書にも出て来る人類(西洋人?)最古のスープ・レンズ豆のポタージュ
- 羊のピリ辛ソーセージ・メルゲーズ。マルセイユでもおなじみだ。
- 野菜のクスクス
- 蒸したセムールにラグーとアパレイユを好みでかけてクスクスはこうして食べる。
それはパリッ子達にもひょっとしたら言えることかも知れない。というのも彼らにはもともとラテンの血が流れているから。欧州の近代化と共に発展した近代のフランス料理より欧州がまだ開発途上であった時代にアジアやアフリカからもたらされたスパイスの強烈なテイストへの憧れが彼らのDNAに刻み込まれているのだと思います。統計的にもフランス人のワイン離れとフランス料理離れは明らかですがアメリカンなファーストフードと並行して北アフリカ系の総菜や料理店、あるいは屋台の売り上げがパリでは伸びています。フランス人達は近代化の中で北アフリカやアジアの国々を植民地として支配しましたがその過程で近代化以前にDNAに刻み込まれたスパイスの記憶が呼び起こされてしまったのでしょう。北アフリカの料理は新しいフランス料理の手法で自らを洗練させながらそうしたフランス人の潜在的欲求に見事に応えたとも言えます。
- チェニジアが誇る特級 AOC Reine Dindo Pinot Noir の説明をしてくれるオーナーのムッシュー・ジェリビ・モンデール
- Reine Dindo Pinot Noir を自らそそいでくれるムッシュー・モンデール
- パンタドゥ(ホロホロ鳥)のロースト。スパイシーな仕上げはマイルドなフランス料理のパンタドゥを凌ぐ。
- オーナーのムッシュー・ジェリビ・モンデール
写真の解説に書いたように料理もワインもとても満足もいくものでした。そしてオーナー・モンデール氏のきめ細かなサービスも。この店はレストランとしてだけではなく小さなライブ空間としてもとても良いものをもっておりモンデール氏と話をする中で彼がこの店でジャズのライブをやりたい意向を持っていることもわかりました。そこでここでのライブの話をドラムマニアのメンバーと話してみたのですが彼らも乗り気 -- 特に小口さん -- だったので集客から当日のメニューや価格設定などをモンデール氏と詰めてみることにしました。こういう専門料理店で共にライブをやろうとして下さるお店はとても有り難い。こういう店にはこちらもいろいろ協力したいと思います。