KumarinX Kaneko Ryogen Jean Michel Kaneko Photography MacOSX

テトラポッドの功罪

テトラポッドは単に景観破壊だけで自然には優しいのか

f:id:kumarin:20071206002403j:image:w600

テトラポッドの功罪 : M6 + ELMARIT 28mm F2.8 f/11.0 1/500sec. DNP CENTURIA200

 海辺に並ぶテトラボッドと敷設するクレーン。消波ブロック(=通称テトラボッドは)は景観が損なわれるという点を除けば波の力を抑えて海岸の浸食をゆるめるという名目の元に敷設され津波や水害から海辺の人々の生活を守るという効果や、ブロックの隙間の流れが穏やかになってメバルアイナメなどが住むには好都合な環境を造り、磯焼けで魚のゆりかごと言われる藻場が無くなってしまったところへ敷設すれば藻場が再生されるという環境保護への良い面が強調される。

 磯焼けとは海流の変化、ウニなどの藻食動物による食害、大量の河川水や砂泥の流入、海岸の環境汚染による海水の汚濁が招く海藻の光合成作用の鈍化などによって、代わりにサンゴモと呼ばれる、うすいピンク色をした硬い殻のような海藻が、海底の岩の表面を覆いつくす状態をいうそうだ。海草が無くなれば魚が寄りつかなくなり代わりに食用はならない小ウニや巻き貝などが増えて生態系のバランスが崩れてしまうという。

 ならば消波ブロックは環境には好都合じゃないかと言えそうだがところがどっこい自然はそんなに単純ではなく、人間の浅智恵など寄せ付けない強靱さと奥深さがある。この話を僕にしてくれたのは若い料理人のMさんだ。彼は日本の食文化を見据えその基底を支える日本の風土と生態系に関心を寄せ環境問題には非常に造詣が深い。海と付き合うことを通して自然や闇の恐ろしさを肌で知り、自然に対する謙虚さとバランス感覚を身につけていて、いま日本の海が抱えている問題を雄弁に熱く語ってくれた。こういう人との対話はとても心地がよいものだ。

 彼はテトラボッドの敷設は長期的には砂が海岸に環流することも阻止してしまい海岸の浸食を防ぐどころか、消波ブロック敷設の外側に出た砂が岩礁により海藻の群落形成を阻害してかえって生態系を破壊することに繋がるのだと話してくれた。そこで僕もいろいろと調べてみるとなるほどという事実が浮かび上がった。環境省・生物多様性センターの調査では千葉県館山市那古船形港の消波ブロック構築後は、平らな磯は砂に埋没して海藻群落は点在状態から消滅状態となってしまい、このような海触防止のために海岸に平行にテトラポッドを積んだり、テトラポッド群と陸地の間を埋め立てたりすることによって既存の藻場が消滅してしまったことは銚子半島や太東岬から御宿までの海岸で見られる(*1)と報告している。

 日本の海岸は全長の55%が消波ブロックで覆われているという。これは軍事用途で敷設されている韓国と北朝鮮を除けば異様に多いように思われる。もちろん消波ブロックがすべて無駄な投資だという気はない。しかし先に挙げた藻場の生態系の破壊のみならず海岸の1/2以上の距離に強アルカリ性のコンクリート製の固形物を敷設して海水にさらすというのも将来なにか問題を引き起こすのではないだろうか。WIKIペディア(*2)には「ブロック形状の改良や付加価値を付けることで、カニや藻類の生息環境を創出するなどのメリットがある」などと書かれているが先の生物多様性センターの報告を見れば「カニや藻類の生息環境を創出する」のは条件が合致した場合のみであり千葉県の例を見ればむしろその正反対の事実が突きつけられていて普遍的なメリットなどでは到底あり得ない。

 であれば「日本の海岸の原風景である白砂青松を破壊するものとしての批判(WIKIペディア)」も大きく生きてくるのではないか。この批判を切り崩す功の部分の論理性は崩れている。Mさんのような若い方がこうしたことに関心を持ち考えておられるということは素晴らしいことだ。しかも彼は行動に移している。僕自身はベアネットワークを通じて自然への畏敬と持つべき謙虚さを学んできた。彼は海を通して同じように学んでいる。違う視点からのアプローチを他者から学び共有することは他者からの批判と同じように実に良いものである。それが彼のように若い人であればなおさら刺激的だ。そう人間は自然など支配出来っこないのだ。