KumarinX Kaneko Ryogen Jean Michel Kaneko Photography MacOSX
読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

吉行淳之介「原色の街」を訪ねて

Photographe 昭和探訪

原色の街 I
原色の街 I
LX + smc PENTAX-M 1:1.7 50mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『隅田川に架けられた長い橋を、市街電車がゆっくりした速度で東へ渡っていく。その電車の終点にちかい拾いアスファルト道の両側の街には変わった風物が見えているわけではない。ありふれた場末の町に過ぎない。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 II
原色の街 II
Leica D-LUX2 + DC Vario-ELMARIT

『本屋の隣は大衆酒場で、自転車が四、五台。それぞれ勝手な方向をむいて置かれてある。その酒場の横に、小径が口をひらいている。』~吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 III
原色の街 III
LX + smc PENTAX-M 1:1.7 50mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『それは、極くありふれた路地の入口である。しかし、大通りからそこへ足を踏み入れたとき、人々はまるで異なった空気につつまれてしまう。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 α
原色の街 α
Leica Minilux with SUMMARIT 40mm F2.4 絞り優先AE -2/3EV Kodak T-MAX400
『細い路は枝をはやしたり先が岐れたりしながら続いていて、その両側には、どぎつい色あくどい色が氾濫している。ハート型にまげられたネオン管のなかでは、赤いネオンがふるえている。洋風の入口の家の入口には、ピンク色の布が垂れていて、その前に唇と爪の真っ赤な女が幾人も佇んでいる。人目を惹くようにそれぞれの思案を凝らせた衣装にくるまって、道行く人に、よく光る練り上げた視線を投げている。鼻にかかった、甘い声が忍び寄っていく。中には、正面から抱きついて脂肪のたまった腹部をすりよせながら、耳元で露骨な言葉をささやく女もある。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 IV
原色の街 IV
Leica D-LUX2 + DC Vario-ELMARIT
『この街の男女関係は、極めて明晰である。女にとって、この街にいることは、どんなに美しく稀にはういういしく見える女でも、定まった金額で身体を売るという徽章を身につけていることである。したがって、女にとっては、自分に向けられる男の視線の中に、「この女ははたして自分の申し出に応じるだろうか」と迷っている疑わしげな探るような陰湿な好色さを見いだすことはない。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 V
原色の街 V
LX + smc PENTAX 1:2.8 24mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『この街の底から、一種の開放感のようなものを嗅ぎ出そうとする少数の人々も存在しているのだ。あけみという名を付けられて、この街に軒を並べている店の一つに住んでいる女は、その開放感をこの街から見いだすことが出来た。いや、この街からしか開放感を見いだすことが出来ないような立場に置かれた、と彼女自身が思いこんだ時期があったと言ったほうがよいだろう。そして彼女自身は、その開放感に惹かれてこの街に身を置くようになった、という弁解を心に抱いている。~……それが、結局は彼女を一層不幸にしてゆくということには、あけみはまだ気付いていない。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 VI
原色の街 VI
LX + smc PENTAX 1:2.8 24mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『あけみは自分にたいして悪意に満ちた気持ちになってゆく。と同時に、淫靡な心も、彼女の意識の下でかすかに一瞬ゆらめく。多くの男との肉体だけの交渉が、やはり、あけみの躯の未熟さを次第にとり除いてゆき、今では実った肉が皮膚の内側に在った。それをあけみははっきりと意識に上らせていない。かすかなおののきが、躯を掠めて過ぎゆくときにも、彼女の心はたちまちそれを不快な身慄いにすりかえてしまうのだ。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 VII
原色の街 VII
LX + smc PENTAX 1:2.8 24mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『だけど、とうとう我慢できなくなってしまったの。男たちの目つきが。……この女は、金でなんとかなるかな、いくらくらいでついて来るかしら、それともタダでうまく浮気できるかな、というあの舐めまわすような、疑りぶかい湿った眼。わたしの一番嫌いな黄色く光る眼。最後に、ひどく疲れて鈍くなっている神経の、底の方でいらいら沸き立っている部分で、決心してしまった。……いつも、そんな眼で見られるくらいなら、いっそ、はっきり、お金で女の買える仕組みになっている町へ入ってしまおう……』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街 VIII
原色の街 VIII
LX + smc PENTAX 1:2.8 24mm 3EV減感 Kodak Ektar 100
『やがて、そのひろがりの中に、あけみ自身の裸形を写した印画紙が一枚ひらひらと舞い降りてくる。その印画紙の枚数は、みるみるうちに殖えていく。灰色の空間を舞い下りてゆく牡丹雪のように、それはいちめんに白い点々となって、そのひろがりを埋めはじめた。
 あけみは多くの眼が、疑わしげに探るように、自分に集まっていることに、まず気付くのだった。あけみは、ふたたびあの街に戻って行こうとしている、自分の心を知った。』吉行淳之介「原色の街」より

原色の街・驟雨 (新潮文庫)

原色の街・驟雨 (新潮文庫)

にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ